「確定申告の時期が来ると、毎年憂うつになる」——。
そんな声を、取材先の農家さんからよく聞きます。特に、何が経費になるのか、どこまで計上していいのかがわからない、というお悩みは多いです。
米農家の経費は意外と幅広く、正しく計上すれば節税につながります。この記事では、米農家が確定申告で経費にできるものを一覧で整理しました。毎年の確定申告の参考にしてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。具体的な判断は、税理士や最寄りの税務署にご相談ください。
米農家の確定申告の基本

農業所得は「事業所得」
米農家の収入は、所得税法上「事業所得」に分類されます。事業所得は、収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
農業所得 = 収入金額 − 必要経費
つまり、経費を正しく計上するほど、課税対象となる所得が減り、税金が安くなります。
白色申告と青色申告
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 事前届出 | 不要 | 必要 |
| 帳簿 | 簡易帳簿 | 複式簿記 |
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 赤字の繰越 | 不可 | 3年間繰越可能 |
農業を本格的に行っているなら、青色申告が圧倒的に有利です。65万円の特別控除は大きな節税効果があります。まだ青色申告をしていない方は、ぜひ検討してみてください。
経費にできるもの一覧

種苗費
お米の種もみや苗の購入費用です。自家採種している場合でも、種もみの消毒薬などは経費になります。
肥料費
化学肥料、有機肥料、堆肥などの購入費用。土壌改良材も含まれます。
農薬費
除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの購入費用。特別栽培や有機栽培で農薬を減らしている場合は、その分この項目は少なくなりますが、代わりに人件費や資材費が増える傾向があります。
農具・農機具費
鎌、鍬、スコップなどの小農具は購入時に全額経費。トラクター、田植機、コンバインなどの高額な農機具は、減価償却で数年に分けて経費計上します。
主な農機具の耐用年数(減価償却):
- トラクター:7年
- 田植機:7年
- コンバイン:7年
- 乾燥機:7年
- 精米機:10年
10万円未満の農機具は、購入した年に全額経費にできます。
燃料費(ガソリン・軽油)
トラクターや軽トラックの燃料費。農業に使った分を経費にできます。自家用と兼用の場合は、使用割合に応じて按分します。
修繕費
農機具の修理代、ビニールハウスの補修費、農道の補修費など。
水利費・土地改良費
水利組合への賦課金、土地改良区の経費など。
地代・賃借料
借りている田んぼの賃借料。農機具のリース料もここに含まれます。
荷造運賃
お米の発送にかかる送料、段ボールや米袋の購入費用。ネット販売をしている農家さんは、この経費が大きくなりがちです。
通信費
ネット販売に使うインターネット回線料、スマホの通信費。農業専用の回線でない場合は、使用割合で按分します。
広告宣伝費
ネットショップの運営費、チラシの印刷代、SNS広告の費用など。
雑費・消耗品費
作業着、長靴、手袋、マスク、事務用品など。
見落としがちな経費

自動車関連費
農業で使う軽トラックやバンの費用は、以下がすべて経費になります。
- 車両の減価償却費
- ガソリン代
- 自動車税
- 自動車保険
- 車検費用
- 駐車場代
自家用と兼用の場合は、走行距離などで農業使用分を按分します。
研修・視察の費用
農業に関するセミナーへの参加費、先進農家の視察のための旅費交通費も経費です。
接待交際費
取引先との打ち合わせでの飲食費、お歳暮・お中元なども、農業に関連するものは経費にできます。
家事按分が必要な経費
自宅の一部を農業事務所として使っている場合、以下の費用を農業使用分として按分できます。
- 家賃(持ち家の場合は減価償却費)
- 電気代
- 水道代
- 火災保険料
按分割合は、面積比や使用時間比で合理的に算出します。
経費管理のコツ

レシート・領収書は必ず保管
すべての経費の証拠となるレシート・領収書は、最低7年間保管が必要です。月ごとに封筒に分けて保管するだけでも、申告時にラクになります。
会計ソフトの活用
農業用の会計ソフトやクラウド会計サービスを使えば、日々の記帳が格段に楽になります。スマホでレシートを撮影するだけで入力できるアプリもあります。
農業簿記の相談先
わからないことがあれば、以下の窓口に相談できます。
- 税務署の確定申告相談
- JA(農協)の営農指導
- 商工会・商工会議所
- 税理士
まとめ
米農家の確定申告では、種苗費から燃料費、通信費、自動車関連費まで、農業に関わる幅広い支出を経費にできます。経費を正しく計上することは、節税だけでなく、自分の農業経営を数字で把握するためにも大切です。
日々のレシート管理と記帳を習慣にして、確定申告のストレスを少しでも軽くしましょう。農業を支えるのは、土づくりだけでなく、お金の管理でもあるのです。
実際に経営している農家さんの実例
確定申告や経費管理は、机上の話ではなく実際の農家さんがどう実践しているかを知ることが一番の学びになります。コメボウJOURNALで取材させていただいた農家さんから、参考になるエピソードを紹介します。
71歳・元小学校教員が辿り着いた経費管理の知恵
福岡県のぶぜんのお米こが農園・古賀博行さんは、38年間小学校の教員を務めながら米作りを続け、61歳で退職後に専業農家になりました。無農薬栽培にこだわる古賀さんは、化学肥料の高騰に悩んだ時期を経て、光合成細菌を自家培養する方法に行き着きました。
「自分で培養するっていうのは、ちょっと手間暇かかりますけど、化学肥料とか買いよったらすぐに何十万ってなりますもんね」
古賀さんのように、経費を抑える工夫は農業経営の要です。具体的な実例は古賀さんの取材記事でご覧いただけます。
直販で手取りを最大化する福島の自然栽培農家
福岡県宗像市の農業福島園・福島光志さんは、18年間農薬を使わない自然栽培を貫き、25ヘクタール・10品種・450人の年間購入客を抱える成功農家です。販売はすべて直販で、手数料がかからない分しっかりと利益を確保しています。
経費の計上と同じくらい、売り方の工夫が手取りを左右します。福島さんの挑戦はこちらの記事に詳しく書かれています。
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