新潟の農家さんの直販サイトで、コシヒカリや新之助と並んで「つきあかり」という名前を見かけることが増えました。「聞いたことがない」「新しいブランド米?」と思う人が多いはずです。答えは、農研機構が2016年に品種登録を出願した早生の品種。まだ若いお米です。
つきあかりの持ち味を一言でいえば、「コシヒカリより2週間早く穫れて、炊きあがりが艶やかで、保温しても美味しい」。農研機構のプレスリリースは「炊飯米の外観、うま味に優れ、4時間保温後も良好」と記し、名前の由来を「ご飯の外観が艶やかで輝くように見えることから」と説明しています。つきあかり=月明かり。炊きあがりの輝きが名前になったお米です。
この記事では、つきあかりの生まれ・コシヒカリやあきたこまちとの違い・美味しい炊き方・合う料理・買うときの選び方まで、農研機構の公開資料をもとに整理します。
結論:つきあかりは「早い・艶やか・保温に強い」で選ぶお米
先に結論です。つきあかりの魅力は3つ。コシヒカリより2週間早く新米が出ること、炊きあがりの艶とうま味、そして保温しても味が落ちにくいこと。農研機構はこの品種を「早生で多収の極良食味水稲新品種」と位置づけています。
「極良食味」は、農研機構が最も高い食味区分に使う言葉です。早生で多収、つまり農家にとって作りやすく、消費者にとって美味しい——両方を狙って作られた品種だということが、この一言に凝縮されています。
- こんな方に向く:新米をいち早く食べたい/炊飯器で保温する時間が長い/艶のあるごはんが好き/新潟の新しい品種を試したい
- 味の方向性:うま味と艶。粒はあきたこまちより大きく、保温後も食味が保たれる
つきあかりとは?宮崎の在来種と北陸の良食味を掛け合わせた品種
つきあかりは、農研機構(中央農業研究センター)が育成した品種です。プレスリリースによると、交配組合せは宮崎の在来品種「かばしこ」を母、極良食味品種「北陸200号」を父としたF1に、「北陸208号」を交配したもの。九州の在来種の血と、北陸の良食味系統を掛け合わせた、少し変わった生い立ちです。
品種登録は第31061号として平成28年(2016年)4月20日に出願、7月27日に出願公表。プレスリリースには「平成28年度より新潟県上越市で栽培開始、数年後に北陸地域中心に数百haの栽培が見込まれている」とあり、新潟を起点に広がった品種だと分かります。取材した新潟の農家さんが作付けに加えているのは、この経緯のためです。
栽培適地は東北中南部、北陸、関東以西とされています。特定の県のブランド米ではなく、農研機構が育て、各地の農家が選んで作るタイプの品種です。同じく農研機構育成で、取材農家が育てているにじのきらめきについてはにじのきらめき完全ガイドで書いています。
なぜ作られたのか|弁当・外食の「3割」を見据えた品種
つきあかりの育成のねらいは、農研機構の研究成果情報にはっきり書かれています。主食用米の3割が外食・中食産業で消費される中で、大規模な農業法人から「移植・収穫時期を分散したい」という要望があり、それに応えるためにコシヒカリより早生で、収量性が高く、炊飯米の外観が良い極良食味品種を育成した、というものです。
つまりこの品種は、最初から「弁当や外食で使われても美味しく、農家が作りやすい米」を目指して設計されました。保温後の食味が評価項目に入っているのはそのためです。研究成果情報によれば、2019年度の検査実績は12,000tを超え、作付面積は2,400ha以上。7県で産地品種銘柄の設定が申請中とされ、着実に広がっている品種です。
つきあかりの特徴3つ|早い・大粒で多収・保温に強い
1. コシヒカリより2週間早く収穫できる
プレスリリースの数字はこうです。出穂期は「コシヒカリ」より1週間早く、「あきたこまち」とほぼ同じ。成熟期は「コシヒカリ」より2週間早い。消費者から見れば、コシヒカリの新米より半月早く、新潟の新米を食べられるということ。新米の時期全体は2026年の新米はいつから?も参考にしてください。
2. あきたこまちより粒が大きく、1割多く穫れる
玄米の千粒重は「あきたこまち」より2g程度大きく、玄米収量は標肥栽培で9%程度、多肥栽培で8%程度の多収。同じ早生のあきたこまちと比べて、粒が大きくて量も多い。稈は短く倒伏抵抗性が強いので、作り手にとっても扱いやすい品種です。あきたこまちの特徴はあきたこまち完全ガイドで詳しく書いています。
3. 炊飯米の外観とうま味。4時間保温しても良好
ここがつきあかりの「消費者向けの武器」です。プレスリリースは「炊飯米の外観、うま味に優れ、4時間保温後も良好」と明記。炊飯器で保温したごはんは、時間が経つと黄ばみや匂いが出て味が落ちるのが普通ですが、つきあかりは保温後の食味が保たれることを農研機構が評価項目として挙げています。名前の由来「艶やかで輝く外観」も、この炊きあがりの見た目から来ています。
研究成果情報にはさらに踏み込んだ評価があります。育成地の試験では「外観、うま味に優れ、総合評価は明らかにあきたこまちに優り、コシヒカリよりも優る」、そして4時間保温後でもコシヒカリより食味に優れるとされています。育成地での試験結果なので産地や年によって変わりますが、農研機構自身がコシヒカリと比べて「優る」と書いたのは、この品種の評価の高さを示しています。
つきあかりとコシヒカリ・あきたこまちの違い
| 項目 | つきあかり | コシヒカリ | あきたこまち |
|---|---|---|---|
| 育成 | 農研機構。2016年出願 | 全国で最も多く作付け | 秋田県。東北の早生定番 |
| 熟期 | 早生。成熟はコシヒカリより2週間早い | 基準 | 早生。出穂はつきあかりとほぼ同じ |
| 粒 | あきたこまちより千粒重2g程度大きい | 中粒 | 中粒 |
| 食味 | 極良食味。外観・うま味・保温後も良好 | 粘りと甘みの基準 | あっさりで粒立ちが良い |
| 稲の姿 | 短稈で倒伏に強い | 稈が長く倒れやすい | つきあかりより10cmほど背が高い |
位置づけとしては、「あきたこまちと同じ時期に穫れて、粒が大きく、保温に強い」。コシヒカリの代わりというより、早生の枠でより美味しく多く穫れる選択肢です。コシヒカリはコシヒカリ完全ガイドで詳しく書いています。
つきあかりはどこで作られている?新潟を起点に北陸へ
プレスリリースにあるとおり、つきあかりは新潟県上越市で栽培が始まり、北陸を中心に広がることが見込まれた品種です。産地ブランドはまだなく、「作り手が選んで作っている」段階のお米だと言えます。
コメボウJOURNALで取材した新潟の農家さんの中では、南魚沼のひらくの里ファームさんが「品種はコシヒカリ、新之助、つきあかり、こがねもち」と4品種の一つに、弥彦の石井農園さんが「早稲品種のつきあかり」としてコシヒカリ・こがねもち・こしいぶきと並べて育てています。どちらもコシヒカリを主力にしつつ、早生の枠につきあかりを入れて収穫時期を分散するという使い方です。新潟のお米全体は新潟お米完全ガイドにまとめています。
つきあかりを美味しく炊く3つのコツ
1. 水加減は目盛りどおりから。大粒なので浸水はしっかり
あきたこまちより粒が大きい品種なので、芯まで水を入れるための浸水が大事です。夏30分・冬1時間を目安に浸水し、水加減はまず炊飯器の目盛りどおりで。浸水の考え方は米の浸水時間は長すぎるとどうなる?にまとめています。
2. 保温に強いからこそ、朝まとめ炊きが向く
「4時間保温後も良好」という評価を活かすなら、朝に1日分を炊いて、昼まで保温という使い方がはまります。とはいえ保温は短いほど美味しいのは同じなので、夜の分は粗熱を取って冷凍するのがおすすめです。
3. 精米日を見て、艶のうちに食べ切る
「艶やかで輝く外観」が持ち味なので、精米後の鮮度がそのまま見た目に出ます。袋の精米日(精米時期)を確認し、1か月で食べ切れる量を買ってください。精米日の見方は精米日とは?お米の鮮度が味を決める理由で解説しています。
つきあかりに合う料理|白ごはん・お弁当・丼
- 白ごはん:艶とうま味が持ち味。新米の時期は、まずそのまま
- お弁当・おにぎり:保温後の食味が保たれる品種は、冷めても崩れにくい傾向。→ お弁当に向くお米
- 丼・カレー:大粒でつぶれにくく、タレやルーに負けない。→ カレーに合うお米
- まとめ炊き:保温4時間でも良好なので、家族の食事時間がばらばらの家庭に向く
粘りの方向はコシヒカリほど強くはないので、おかずを選ばない万能型として使えます。特定の料理に尖らせるより、毎日のごはんとして使い倒すのが向いています。育成のねらいが「外食・中食」だったことを思い出すと、定食屋の白ごはん、弁当のごはん、炊き込みごはんのように、毎日大量に炊いて時間が経ってから食べる場面こそ、この品種の設計思想に合った使い方です。
家庭でその良さを再現するなら、朝炊いて昼に食べる、夜炊いて翌朝のおにぎりにするといった「時間差」のある食べ方がおすすめです。炊きたてで差が出にくい品種でも、数時間後に差が出る——つきあかりはそういうタイプのお米です。
農家目線で見たつきあかり|作期分散と多収
作り手にとってのつきあかりの価値は、農研機構が「早生で多収」と要約したとおりです。
- コシヒカリと収穫をずらせる:成熟期が2週間早いので、刈り取りの山を分散できる
- 多収:あきたこまち比で標肥9%・多肥8%の増収。同じ面積で量が穫れる
- 倒れにくい:短稈で倒伏抵抗性が強い。あきたこまちより稈長が10cmほど短い
- 業務用にも向く:保温後の食味が良好なことは、中食・外食の現場で評価されやすい
一方で留意点もあります。研究成果情報は「腹白が出やすいため、過剰な穂肥、早期の落水および刈り遅れは避ける」と注意し、縞葉枯病には罹病性なので常発地では防除の徹底を求めています。玄米品質は「中中」。味は極良、見た目の等級は管理次第——作り手の腕が出る部分もある品種です。
取材した2軒がコシヒカリの脇にこの品種を置いているのは、「早く・多く・倒れず・美味しい」が揃っているから。新しい品種ほど「本当に美味しいのか」と疑われがちですが、農研機構が極良食味と評価し、現場の農家が選んでいる。その2つが揃っている品種です。
つきあかりはどこで買える?選び方の3つのポイント
2016年出願の若い品種なので、スーパーの棚で見かけることはまだ多くありません。探すなら新潟・北陸の農家さんの直販サイトや産直ECが近道です。
- 時期:コシヒカリより2週間早い。9月に入ったら新潟の農家さんの直販サイトをのぞく価値がある
- 作り手:産地ブランドがない分、農家名で選ぶ。コシヒカリと一緒に作っている農家さんなら食べ比べができる
- 用途:保温時間が長い家庭・お弁当が多い家庭なら、つきあかりを常備米にする価値がある
保存は他の品種と同じく、高温多湿を避けて密閉し、冷蔵庫の野菜室が基本です。詳しくはお米の保存方法完全ガイドを参照してください。
つきあかりが向く人・向かない人
- 向く人:新米を早く食べたい/保温時間が長い/艶のあるごはんが好き/新しい品種を農家さんから直接試したい
- 向かない人:濃厚でもちもちのごはんが好き/有名ブランド米の名前で選びたい/スーパーで手軽に買いたい
「向かない」は品質の話ではなく、好みと買いやすさの話です。コシヒカリとつきあかりを同じ農家さんから買って並べてみると、「2週間早い新米」の価値が実感できます。取材した2軒はどちらもコシヒカリとつきあかりの両方を育てているので、食べ比べにはうってつけです。
新しい品種を、失敗せずに試す3つの工夫
- 2kgの小袋から:好みに合うか分かるまで大袋は買わない
- いつもの品種と同じ日に炊く:比較対象があると、違いが一度で分かる
- 作り手の説明を読む:農家さんの直販サイトには「なぜこの品種を作っているか」が書いてあることが多い。そこに味の方向が出ている
つきあかりのように産地ブランドのない品種は、スーパーの棚では出会えない代わりに、農家さんの直販では「なぜ作っているか」まで一緒に知ることができます。新しい品種を試すことは、その農家さんの考え方を知ることでもあります。
まとめ:つきあかりは、「月明かり」の名を持つ早生の実力派
つきあかりは、農研機構が2016年に品種登録を出願した早生の極良食味品種。コシヒカリより2週間早く穫れ、あきたこまちより粒が大きく1割多収、炊飯米の外観とうま味に優れ、4時間保温後も良好。名前は「艶やかで輝く」炊きあがりから付けられました。
まだ若い品種ですが、新潟の農家さんがコシヒカリの脇に選んで作り始めているのが何よりの証拠。少し早い新米として、ぜひ一度試してみてください。
新潟のつきあかり、育てている農家さんから直接買ってみませんか
つきあかりは、コシヒカリと組み合わせて育てている農家さんが多い品種です。コメボウJOURNALで取材した新潟の農家さんのうち、つきあかりを栽培している2軒と、同じ新潟でコシヒカリを育てる農家さんをご紹介します。
- 南魚沼・ひらくの里ファームさん(コシヒカリ・新之助・つきあかり・こがねもち)の取材記事を読む
- 弥彦・石井農園さん(コシヒカリ・こがねもち・つきあかり・こしいぶき)の取材記事を読む
- 南魚沼・山本農園さん(コシヒカリ・新之助)の取材記事を読む
気になる農家さんがいたら、記事から直接つながっていただけたら嬉しいです。同じ品種でも、田んぼと作り手が変われば炊きあがりの表情は変わります。あなたの食卓に合う一袋が見つかりますように。
よくある質問
Q. つきあかりはどんな味?
A. 農研機構は「炊飯米の外観、うま味に優れ、4時間保温後も良好」とし、食味区分は「極良食味」です。艶のある炊きあがりと、うま味のあるごはん。粘りはコシヒカリほど強くなく、おかずを選ばない方向です。
Q. つきあかりの親は?
A. 宮崎の在来品種「かばしこ」を母、極良食味品種「北陸200号」を父としたF1に、「北陸208号」を交配(農研機構プレスリリース)。九州の在来種と北陸の良食味系統の掛け合わせです。
Q. つきあかりはいつできた品種?
A. 品種登録は第31061号として平成28年(2016年)4月20日に出願、7月27日に出願公表。平成28年度から新潟県上越市で栽培が始まりました。
Q. つきあかりの新米はいつ?
A. 成熟期がコシヒカリより2週間早いので、新潟ではコシヒカリの新米より半月ほど先に出回ります。年や地域で前後するので、農家さんの直販サイトで確認してください。
Q. つきあかりとあきたこまちの違いは?
A. 出穂期はほぼ同じ早生ですが、つきあかりは千粒重が2g程度大きく、収量が9%程度多く、稈が10cmほど短い(農研機構)。同じ時期に穫れる早生の中で、粒と量で上回る品種です。
Q. つきあかりの名前の由来は?
A. 農研機構のプレスリリースによると「ご飯の外観が艶やかで輝くように見えることから命名」。月明かりのような炊きあがりの輝きが名前になっています。炊きたてを蛍光灯の下より自然光の下で見ると、この名前の意味がよく分かります。
Q. つきあかりの水加減は?
A. 炊飯器の目盛りどおりが基本。大粒なので浸水は夏30分・冬1時間としっかり取ってください。新米の時期はわずかに水を減らすと粒が立ちます。
Q. つきあかりは保温しても美味しい?
A. この品種の特徴です。農研機構は「4時間保温後も良好」と評価しています。ただし保温は短いほど美味しいのはどの品種も同じなので、長時間なら冷凍のほうが確実です。
Q. つきあかりの食味ランキングの評価は?
A. 食味ランキングは一般財団法人日本穀物検定協会が実施しており、産地と年産の組み合わせごとに評価されます。つきあかりは特定産地の主力品種ではないため、この記事では特定の評価を断定していません。最新の結果は協会の公式発表をご確認ください。
※品種の特性・評価は年産や産地、栽培条件によって変わります。最新の情報は農研機構および産地の公式発表もあわせてご確認ください。
