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種を買いすぎた妻が、農園を始めた。やよい農園・滝沢篤史、震災から始まった弱アルカリ性の米づくり

2026 5/22
インタビュー
やよい農園 アイキャッチ
ササシグレ 無農薬 無肥料 長野県 飯山市 合鴨農法 弱アルカリ性 半農半X 自給自足 加工品 直販

長野県飯山市 やよい農園 ── 滝沢篤史さん


2011年3月11日。東日本大震災。翌12日未明、震度6強の地震が長野県栄村を襲った。飯山市に隣接する、すぐそこの場所だった。

遠くの大きな地震と、近くの大きな地震。24時間も経たない間に、二度の揺れを経験した男がいる。

滝沢篤史さん。やよい農園の名前は、妻の名前からつけた。


スーパーに、何も並んでいなかった

やよい農園

震災の後、滝沢さんの人生観が変わった。

「スーパーに何も並んでなかった。お金があっても買えないという経験をしたことで、衝撃的でしたし」

棚が空っぽになったスーパーマーケット。お金があっても、食べ物が手に入らない。その光景が、滝沢さんの中で何かを決定的に変えた。

ただ、滝沢さんの家には幸い、お米や芋など保存の効く食べ物があった。すぐに困ることはなかった。

「自分で自分の食べ物を作るということから安心感は得られるんだなっていう経験を通して、そちら側にシフトした」

半農半X。自分の食べ物は、自分で作る。その決断は、震災の年に生まれた。


妻が種を買いすぎた日

やよい農園

同じ2011年、滝沢さんは結婚した。震災があったからどうしようかという話もあったが、予定通り結婚しましょうと決めた。

新しい生活が始まった頃、妻が食べたいものの種をいっぱい買ってきた。いっぱい、というより、買いすぎた。

「種にも僕は命があるんだよと。だからこの余った種はどうすんのって。この小さい畑であれもこれもって買ったかもしれないけども、全部使い切ることができないからって話したら、そこでちょっと不機嫌になっちゃって」

不機嫌になった妻。余った種。小さな畑。

それが、やよい農園の始まりだった。

妻の名前を冠した農園。最初は趣味のような、家庭菜園のような、種まきから始まった。


草に負け続けた日々

やよい農園

滝沢さんは最初から無農薬・無肥料栽培に挑んだ。

結果は、惨敗だった。

「ずっと草に負け続けてなかなか収量上げられなかった」

体力があったからできた。子どもが小さかったから専念できた。でも、穂にお米がほとんどついていない収穫を何年も繰り返した。悔しさが、常にあった。

販路もなかった。作ったものの出口を作らないまま始めてしまった。経営は本当にガタガタで、妻にだいぶ迷惑をかけた。

「妻の支援がなかったら続けてられてなかったなとは思いますね」

種を買いすぎた妻が始めた農園を、妻の支えがなければ続けられなかった。やよい農園は、最初から最後まで、二人の物語だ。


あひるが、田んぼを変えた

やよい農園

転機は5年ほど前。あひる合鴨農法に切り替えた。

あひると合鴨を田んぼに放す。彼らが泳ぎ回ることで雑草を食べ、糞が肥料になる。除草剤も要らない。

量と質が、ようやく揃った。

田んぼの周りには、他にはない環境が生まれた。野生の鴨が飛来してくる。蛍が出る。いろんな虫や植物が集まってくる。

「とにかく豊かですね」

滝沢さんはそう言って、少し誇らしそうに笑った。


薬のようなお米を作りたい

やよい農園

やよい農園のお米には、もう一つの特徴がある。弱アルカリ性だ。

就農した年、知人に誘われて福井県を訪れた。そこでピロール農法という農法に出会った。土の中にいるシアノバクテリアという微生物を活性化させ、作物の栄養価を高める技術だ。

衝撃だったのは、弱アルカリ性のお米を食べてアトピーが良くなったという事例を知った時だった。

「自分のお米が人様の健康を支えていくというか、薬のような食べ物を作ることができるんだっていう衝撃があって」

以来、滝沢さんは毎年お米のpH値とカルシウム値を検査に出している。弱アルカリ性であることを数字で確認し、栄養価のデータをお客さんに提示して販売する。

「普通の農家さんは何キロで何円っていうぐらいの数字だと思うんですが、私は食味値を出したりとか、弱アルカリ性のpHの値、微量要素のカルシウムの値、出しています」

美味しいだけじゃない。安心して食べられるだけでもない。数字で証明できる、薬のようなお米。それがやよい農園のスタイルだ。


「やよい農園のお米だから食べられる」

やよい農園

農業をやっていて一番嬉しいことは何か。滝沢さんは迷わず「お客様の声」と答えた。

「やよい農園のお米だから食べることができてますってお客さんがくれたりとかして。他のお米食べるとちょっと体の調子悪くなるんだとか、お腹がゆるいっていう人がいるんですよ」

お米アレルギーのような症状を持つ人が、やよい農園のお米だけは食べられる。そういう声が、1人ではなく何名かから届いた。

「やってて良かったなと思いましたし、誇らしく思いましたよね」

震災の日、スーパーの棚は空っぽだった。あの日から始めた米づくりが、今、誰かの体を支えている。


蛍が飛ぶ田んぼを、見に来てほしい

やよい農園

やよい農園の主力はササシグレ。全体の8割を占める。残りはコシヒカリともち米。田んぼは今年1.8ヘクタールになった。畑は50アール。さつま芋、じゃがいも、大豆、黒ごま、ボタンコショウ。そして大豆から醤油を作る。

全てインターネットでの直販。食べチョクやポケマルで出会ったお客さんを、1年続いたらBASEに切り替えませんかと誘導する。手数料の安い方へ、少しずつ。

今年から、経営の視点で一部を慣行栽培に切り替える決断もした。近くの力のある農家に買い取ってもらう分を作り、キャッシュフローを安定させる。葛藤はあった。でも、続けるために必要な判断だった。

拡大志向はない。自給率を維持することがベースで、余った分をお客さんに届ける。それがやよい農園のスタンスだ。

「自分の今やってる農業を見に来てもらいたい、体感してもらいたい。このおかげで蛍がこんなに飛んでるのねとか、感じてもらいたいですね」

中山間地で農業を続けることは、簡単ではない。集落の人たちは高齢化している。いつまで続くか分からない。それでも滝沢さんは踏ん張る。

「私のファンになってもらいたいし、飯山市というところのファンになってもらいたい。ゆくゆくは共感して、じゃあ飯山に住もうかって人が増えてくれれば」

震災の日から15年。種を買いすぎた妻と始めた農園は、蛍が飛ぶ田んぼになった。


■ 農家プロフィール

🏡 やよい農園
👤 滝沢篤史 ── 2011年、震災を機に半農半Xで就農。妻の名前から「やよい農園」と名付ける
📍 長野県飯山市(北信濃・関田山脈の麓)
🌾 ササシグレ(8割)・コシヒカリ・もち米。田んぼ1.8ヘクタール+畑50アール
🦆 あひる合鴨農法による無農薬栽培。弱アルカリ性・高栄養価の米づくり
🍠 さつま芋・じゃがいも(絶滅種ベニマル)・大豆・黒ごま・ボタンコショウ・醤油
🔬 毎年pH値・カルシウム値を検査し、数字でお客さんに提示して販売
🔗 https://yayoinouen.jimdofree.com/

よくある質問|この農家・取材内容について

ご質問をクリック(タップ)すると答えが開きます。

Q. やよい農園はどこにありますか?
A. 長野県飯山市にあります。北信濃・関田山脈の麓に広がる中山間地で、隣接する栄村は2011年3月12日未明に震度6強の地震に見舞われた地域でもあります。豪雪地帯ならではの寒暖差と豊富な雪解け水を活かして、お米づくりが続けられています。
Q. やよい農園という名前の由来は何ですか?
A. 農園主・滝沢篤史さんの奥さまのお名前から名付けられました。震災と同じ2011年に結婚した滝沢さんご夫婦が、奥さまの買ってきた種をきっかけに小さな畑を始めたことが原点で、最初から最後まで「ご夫婦二人の物語」として歩んできた農園です。
Q. 滝沢さんが米づくりを始めたきっかけは何ですか?
A. 2011年3月11日の東日本大震災と、翌12日の長野県北部地震がきっかけです。スーパーの棚から食料が消え「お金があっても買えない」経験を通じて、自分の食べ物は自分で作るという半農半Xの暮らしへ大きく舵を切ったとお話しされていました。
Q. やよい農園で作っている主な品種は何ですか?
A. 主力はササシグレで全体の約8割を占めます。残りはコシヒカリともち米です。田んぼは2026年時点で1.8ヘクタール、畑は約50アール。畑ではさつま芋、じゃがいも(絶滅種ベニマル)、大豆、黒ごま、ボタンコショウなども育てられています。
Q. あひる合鴨農法とは何ですか?
A. あひると合鴨を田んぼに放し、雑草を食べてもらい、糞を肥料として活用する栽培方法です。滝沢さんは5年ほど前にこの農法へ切り替えました。除草剤を使わずに済み、田んぼの周りには野生の鴨が飛来し、蛍も舞う豊かな環境が生まれているそうです。
Q. 弱アルカリ性のお米とはどういう意味ですか?
A. 土の中のシアノバクテリアという微生物を活性化させるピロール農法に取り組み、収穫されたお米のpH値が弱アルカリ性側に傾いていることを指します。滝沢さんは毎年pH値とカルシウム値を検査機関に出し、数字でお客さまに提示しているのが特徴です。
Q. やよい農園のお米は他のお米と何が違いますか?
A. あひる合鴨農法による無農薬・無肥料栽培に加え、毎年検査に出した食味値・pH値・カルシウム値などのデータをお客さまへ開示している点が大きな違いです。「数字で証明できる、薬のようなお米でありたい」という滝沢さんの考え方が形になっています。
Q. アトピーやアレルギーがあっても食べられますか?
A. やよい農園のお米だけは食べられるという声が複数のお客さまから届いているとお話しされていました。ただし体質や症状は人それぞれですので、効果を保証するものではなく、医師にご相談のうえ少量から試していただくのが安心かと思います。
Q. やよい農園のお米はどこで買えますか?
A. 販売はインターネット直販が中心です。食べチョクやポケマルで出会ったお客さまには、1年継続いただいた頃合いを見てBASEへ案内する流れも取られています。最新の販売状況は公式サイト(https://yayoinouen.jimdofree.com/)でご確認ください。
Q. 無農薬栽培は最初からうまくいったのですか?
A. 最初の数年は雑草に負け続け、穂にお米がほとんどついていない年もあったそうです。販路も整っていなかったため経営も厳しく、奥さまの支えがなければ続けられなかったと滝沢さんご自身が語っておられます。あひる合鴨農法への切替が転機となりました。
Q. やよい農園では加工品も作っていますか?
A. 畑で育てた大豆を使った醤油づくりに取り組まれています。そのほかさつま芋・じゃがいも(絶滅種ベニマル)・黒ごま・ボタンコショウなども栽培されており、お米だけでなく自給を軸にした多品目の生産が行われています。
Q. 田んぼで蛍が見られるのは本当ですか?
A. あひる合鴨農法に切り替えてから、田んぼの周辺で蛍が舞うようになったと伺いました。野生の鴨が飛来し、さまざまな虫や植物が集まる環境が生まれているそうです。滝沢さんは「自分の農業を実際に見に来てほしい」とおっしゃっていました。
Q. 今後やよい農園が目指す姿はどんなものですか?
A. 拡大志向ではなく、自給率を維持しながら、余った分をお客さまに届けるスタンスを大切にされています。「私のファンになってほしい、飯山市のファンになってほしい、ゆくゆくは飯山に住みたいと思う人が増えてくれたら」と語っておられました。
Q. 中山間地で農業を続ける難しさはありますか?
A. 集落の高齢化が進み、いつまで地域の農業が続くか分からないという葛藤を抱えながら踏ん張っているとお話しされていました。また、経営を安定させるために、一部を慣行栽培に切り替えて近隣の農家へ出荷する判断も取られています。
Q. やよい農園を直接訪ねることはできますか?
A. 滝沢さんは「自分の今やっている農業を見に来てほしい、体感してほしい」と話されていました。受け入れの可否や時期は農繁期の状況によりますので、訪問を希望される場合は事前に公式サイトや連絡フォームから相談していただくのが確実です。

やよい農園のお米を選ぶ・楽しむための5ステップ

各ステップをクリック(タップ)すると詳細が開きます。

Step 1:栽培の背景を知る
やよい農園は震災を機に半農半Xで始まった、奥さまの名前を冠した「ご夫婦二人の物語」が原点です。まずは記事で、想いと歩みをご覧ください。
Step 2:農法と数値データを確認する
あひる合鴨農法による無農薬・無肥料栽培で、毎年pH値・カルシウム値・食味値を検査されています。販売ページの公開データをご確認ください。
Step 3:品種と数量を選ぶ
主力ササシグレ(約8割)・コシヒカリ・もち米から、ご家庭の食べ方に合わせて選んでみてください。最初は少量から試すのが安心かと思います。
Step 4:信頼できる販路から購入する
食べチョク・ポケマル・BASEなどのインターネット直販が中心です。最新の販路は公式サイト(https://yayoinouen.jimdofree.com/)でご確認ください。
Step 5:感想を届け、関係を続ける
滝沢さんは「一番嬉しいのはお客さまの声」と語られています。食べたあとの感想を伝えることが、農園にとって大きな励みにつながります。

参考・出典

  • 取材農家ご本人の発言・公式情報(取材時点)
  • 農林水産省・各都道府県農産物統計
  • コメボウJOURNAL編集部によるオンライン取材

※本記事の情報はコメボウJOURNAL取材時点のものです。最新情報は各公式サイト・公式SNSをご確認ください。

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コメボウJOURNAL編集部。全国の米農家21名のオンライン取材を経て、「全国の米農家と消費者・飲食店が、直接つながる」をミッションに発信。2026年に農業DXサービス「コメボウ」を立ち上げ、取材と仕組みづくりの両軸で米農家の経営を支援している。

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