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鬼ノ城のふもとで、7世代続く家族の農業。MsFineFarm・秋山款美、岡山・総社で紡ぐ”当たり前の積み重ね”

2026 5/22
インタビュー
きぬむすめ にこまる ミルキークイーン にじのきらめき 岡山県 総社市 7代目 家族経営 直販 鬼ノ城

岡山県総社市東阿曽 よしひろ農園(MsFineFarm)── 秋山款美さん


鬼ノ城のふもと。岡山県総社市東阿曽で、季節や時間によって表情を変える稜線の下、親子三人が、200年の時を超えて米を作り続けている。

足守川水系の豊かな水と、長い年月をかけて育まれてきた土。その恵みを受け、約200年、この土地で続いてきた家族の営み。

その6代目、秋山款美さんに話を聞いた。


三年前、息子が先に専業を選んだ

よしひろ農園が家族経営として今のかたちになったのは、ここ数年のことだ。

「三年前に息子が専業を始めて、去年から僕もサラリーマンを辞めて専業になりました」

秋山さん自身も、つい最近まで会社勤めをしながらの兼業農家。それが今では本人・息子・父親の三人体制。父は15年ほど前に定年退職し、以降は趣味として農業を続けてきた。

「父親はずっと息子を指導してくれていて、息子が専業になって規模が広がりました。今は3人で専業でやってます」

以前は5町ほどの規模だった田んぼは、専業化と共に11〜12町(11〜12ha)まで拡大。息子の”先行専業化”が、家族全体の動きを変えた。


父の”地道な積み重ね”が、農地を呼び寄せた

11haという規模は、一朝一夕で広がったものではない。

「父が長年続けてきた丁寧な田畑の管理があるんです。草刈りや畦の補修、水管理といった地道な作業を、日々欠かさず積み重ねてきた」

「ここなら任せられる」──近所の方々からそう言われ、お預かりする田んぼが少しずつ増えていった。

「農業は一朝一夕で成果が出るものではなく、積み重ねが後になって評価される仕事だと実感しています」

信頼は、数字ではないもので計られる。父の毎日の畦塗り、毎朝の水管理、周囲への気配り──そういった”見えない働き”が、11haという数字を生んだ。


当たり前を愚直にやる──神は細部に宿る

米作りで何を大切にしているか、と聞くと、秋山さんの答えはシンプルだった。

「当たり前のことを愚直にやること、これが全てです」

しっかり耕耘する。草や水の管理を徹底する。派手な新技術ではなく、基本に忠実であり続けること。

「神は細部に宿る、という考えに基づいています」

さらに、地域との連携も欠かせない。水路の管理や作業時期の調整は、周囲との協力があってこそ成り立つ。田んぼをしっかり管理することが地域の信頼につながり、その信頼が次の田んぼを任される根拠になる。農業は、一農家で完結するものじゃない──秋山さんは繰り返しそう話した。


農協出荷ゼロ。”直販1,000万円”への道のり

秋山さんが大きく舵を切ったのが、直販への完全移行だ。

「去年から農協への出荷をゼロにして、すべて自分たちで販売しています」

ネット販売を始めたのは5〜6年前。米騒動でネットでも個人販売でも米がよく売れるようになったことと、単価を上げるためだった。

直販チャネルは、大手ECモールと直販サイトを複数併用。昨年のネット販売売上は約1,000万円弱。お米そのものの質の高さで、値段が高くても選ばれてきた。

「今年は”米の熱が冷めた”感じもあって、新米の予約ペースは落ちています。ただ、リピーターがいるので売上が大きく落ちることはないと思っています」

販売データを見ると、顧客の1〜2割がリピーターで、8回以上リピートしているファンもいる。一度秋山さんの米に出会った人は、何度も戻ってくる。


「これなら忘れて帰る人がいない」── 2合パックという発想

直販の中で、秋山さんが独自に編み出したのが“2合入りオリジナルパッケージ”だ。この事業は、“MsFineFarm”という屋号で展開している。

「スナックやラウンジの周年祝い、会社のイベント記念品として、2合入りのお米を納入しています。パッケージは主催者さんが自由にデザインできる”その日だけの一袋“です」

実際に採用した主催者からは、こう言われたという。

「これなら忘れて帰る人がいないんです」

日用品の記念品は引き出しにしまわれて終わる。でも、お米は必ず食卓にのぼる。軽すぎず、重すぎず、持ち帰りやすい2合という量も好評だ。

毎日の暮らしに溶け込みながら、きちんと記憶にも残る──実用性と記念性を兼ね備えた、小さいけれど大きな発明。


気候変化と、新品種への挑戦

現場で強く感じるのが、気候変化だ。

「小学生の頃は10月の稲刈り時期にもうこたつが出ていた。今は残暑の厳しい中で稲刈りをするのが当たり前です」

この変化は作業環境だけでなく、稲の生育や品質にも影響する。秋山さんは品種の見直しにも積極的だ。

長年作ってきた「ヒノヒカリ」は高温障害が出るようになり、今年から「にじのきらめき」に切り替え中。岡山県推奨米の「きぬむすめ」「にこまる」を中心に、「ミルキークイーン」、そしてもち米と4〜5品種を栽培している。

12町もの田んぼを10月に一度に刈り取ることはできない。だから9月から11月上旬にかけて順番に。一番美味しい時期に刈れるように、時期を分散させる工夫だ。

省力化のためにドローンも導入。限られた時間と経費の中で、無理なく続ける工夫を重ねている。


親子三世代でつなぐ、これからの未来

よしひろ農園には、息子という20代の若い担い手がいる。

「農業の現場では40代・50代でも若いほうと言われます。うちは20代が最年少として日々の農作業に向き合っている」

息子は米作りの後に野菜栽培にも挑戦中。ブロッコリー、ほうれん草、レタス。米で培った水管理や土づくりの知識を生かしながら、少しずつ品目を広げている。

「米と野菜の両方で食料供給をしっかり行いたい」

そして、秋山さん本人は販売・PR・広告が好きなタイプ。栽培は息子、販売は自分という”良い役割分担”が生まれている。

「世代を超えて、相談しながら進められる環境があるのは、日々の農業を続けていく上で大きな力です」


“当たり前”の先にある、未来の食卓

鬼ノ城のふもと、水を張った田んぼに山並みが映る風景。黄金色に実る稲穂が風に揺れる秋の景色。長く農業が続いてきたからこそ残されてきた景観だ。

「私たちが農業を続けることそのものが、この風景を守ることにつながっている」

特別なことを重ねてきたわけじゃない。この土地で、水や土、地域の人たちに支えられながら、できることを一つずつ続けてきた営み。

肥沃な土地と豊かな水、そして人の手をかけた時間が重なり合って、作物は育つ。

「鬼ノ城のふもとで、地域で支え合いながら、この土地で育ったお米や野菜を、変わらず日々の食卓へ届けていきたい」

秋山さんの米は、200年の積み重ねの上に立っている。


■ 農家プロフィール

🏡 よしひろ農園(MsFineFarm)
👤 秋山款美 ── 6代目(200年以上続く家族農業。息子・秋山宏太朗さんが7代目)。昨年まで会社勤めをしながらの兼業農家、現在は専業として家業に専念。
📍 岡山県総社市東阿曽(鬼ノ城のふもと・足守川水系)
🌾 きぬむすめ・にこまる・ミルキークイーン・にじのきらめき・もち米
✨ 親子三人体制・11〜12ha/農協出荷ゼロ・完全直販/ネット販売年間約1,000万円/「2合入りオリジナル記念品パッケージ」で差別化/ドローン導入・省力化/息子が野菜栽培(ブロッコリー・ほうれん草・レタス)にも挑戦
🔗 https://msplantationmk2901.wordpress.com/

よくある質問|この農家・取材内容について

ご質問をクリック(タップ)すると答えが開きます。

Q. MsFineFarm(よしひろ農園)はどこにありますか?
A. 岡山県総社市東阿曽にあるよしひろ農園で、屋号としてMsFineFarmも展開されています。鬼ノ城のふもと、足守川水系の豊かな水に恵まれた地域で、約200年続く家族の米づくりの場とお話しされています。山並みが田んぼの水面に映り込む景観も特徴的なエリアです。
Q. 秋山款美さんはどんな農家さんですか?
A. よしひろ農園の6代目で、200年以上続く家族農業の現当主にあたる方です。昨年まで会社勤めをしながらの兼業農家でしたが、今は専業として家業に専念されています。栽培は息子さん中心、販売・PRは秋山さん中心という役割分担で、米作りと直販事業の両面に向き合っています。
Q. MsFineFarmは何代続く農家さんですか?
A. 200年以上続く家族農業で、秋山款美さんが6代目、息子の秋山宏太朗さんが7代目という構成でお話しされています。さらに15年ほど前に定年退職した父も現役で田んぼに立っており、親子三世代で日々の農作業に取り組まれているのが大きな特徴です。
Q. MsFineFarmの体制と規模を教えてください。
A. 本人・息子・父の親子三人体制で、田んぼの規模は約11〜12ヘクタール(11〜12町)です。3年前に息子が先に専業化したことをきっかけに規模が広がり、以前の5町ほどから現在の規模まで拡大したとお話しされています。父は趣味として続けてきた農業の延長で、今も現場を支える存在です。
Q. なぜ田んぼの規模を11〜12haまで広げられたのですか?
A. 父が長年続けてきた畦の補修・草刈り・水管理など、地道な田畑の管理を毎日積み重ねてきた信頼が背景にあります。「ここなら任せられる」と近所の方々からお声がけいただき、お預かりする田んぼが少しずつ増えていったとお話しされています。秋山さん自身は「積み重ねが後になって評価される仕事」と表現されています。
Q. 米づくりで秋山さんが大切にしていることは何ですか?
A. 「当たり前のことを愚直にやること」と語られています。耕耘をしっかり行い、草や水の管理を徹底し、派手な新技術ではなく基本に忠実であり続ける姿勢です。「神は細部に宿る」という言葉も引用され、地域との連携や水路管理など、一農家で完結しない協調も合わせて大切にされています。
Q. MsFineFarmはどんな品種のお米を作っていますか?
A. 岡山県推奨米の「きぬむすめ」「にこまる」を中心に、「ミルキークイーン」「にじのきらめき」、そしてもち米を合わせて4〜5品種を栽培されています。長年作ってきた「ヒノヒカリ」は高温障害が出るようになり、今年から「にじのきらめき」への切り替えを進めているとお話しされています。
Q. MsFineFarmのお米はどこで購入できますか?
A. 昨年から農協への出荷をゼロにし、すべて自分たちで直販する体制に移行されています。大手ECモールと自社の直販サイトを複数併用し、ネット販売の年間売上は約1,000万円弱とお話しされています。最新の購入チャネルは農園のWeb(https://msplantationmk2901.wordpress.com/)で確認するのが確実です。
Q. ネット販売を始めた経緯とリピート状況を教えてください。
A. ネット販売を始めたのは5〜6年前で、米騒動の時期にネット販売や個人販売で米が動きやすくなったことと、単価を上げたい思いが重なったタイミングでした。販売データを見ると、お客さんの1〜2割がリピーターで、8回以上リピートされているファンもいるとお話しされています。
Q. 「2合入りオリジナルパッケージ」とはどんな商品ですか?
A. MsFineFarmの屋号で展開している、2合入りの記念品用お米パッケージです。スナックやラウンジの周年祝い、会社のイベント記念品として納入されており、パッケージは主催者が自由にデザインできる「その日だけの一袋」になります。実際の主催者から「忘れて帰る人がいない」と評価されたエピソードも紹介されています。
Q. 2合入りパックはなぜ記念品として選ばれているのですか?
A. 日用品の記念品は引き出しにしまわれて終わることが多い一方、お米は必ず食卓にのぼる実用品だからだと語られています。さらに2合という量は持ち帰る際に軽すぎず重すぎず、手土産として現実的なサイズ感です。実用性と記念性を兼ね備えた、小さいけれど大きな発明と表現されています。
Q. 気候変化はMsFineFarmの米づくりにどんな影響を与えていますか?
A. 秋山さんは「小学生の頃は10月の稲刈り時期にこたつが出ていた」一方、現在は残暑の厳しい中で稲刈りをするのが当たり前になっていると話されています。稲の生育や品質にも影響が出ているため、品種の見直しや稲刈り時期を9月から11月上旬まで分散させるなどの工夫を重ねられています。
Q. 省力化のためにどんな機械や工夫を取り入れていますか?
A. 省力化のためにドローンを導入されています。限られた時間と経費の中で無理なく続けるための工夫の一つで、12町もの田んぼを10月に一度に刈り取ることはできないため、品種ごとに刈り時期を分散させるオペレーション設計も合わせて行われています。
Q. 息子さん(7代目)はどんな取り組みをされていますか?
A. 息子さんは20代の若い担い手で、米作りに加えて野菜栽培にも挑戦されています。具体的にはブロッコリー、ほうれん草、レタスなどに取り組み、米作りで培った水管理や土づくりの知識を活かしながら、少しずつ品目を広げているとお話しされています。米と野菜の両方で食料供給を担う構想です。
Q. MsFineFarmの今後の展望を教えてください。
A. 「鬼ノ城のふもとで、地域で支え合いながら、この土地で育ったお米や野菜を日々の食卓へ届けていきたい」というのが基本の方針です。田んぼを続けることそのものが、山並みが映る景観を守ることにつながると語られており、世代を超えて相談しながら進める家族農業の形を、これからも積み重ねていく姿勢が示されています。

MsFineFarmに学ぶ、家族農業を未来へつなぐ取り組み方

各ステップをクリック(タップ)すると詳細が開きます。

Step 1:親子三世代で役割を分担する
父が水管理・畦の補修などの基礎作業、息子が栽培の中心、秋山さんが販売・PRを担う形で役割を分けています。得意が重なることで11〜12haの規模を無理なく回しています。
Step 2:地道な田畑管理で信頼を積み重ねる
草刈り、畦の補修、水管理といった派手さのない作業を、日々欠かさず続けています。その積み重ねが地域からの信頼となり、お預かりする田んぼが少しずつ増えていきました。
Step 3:農協出荷ゼロ・完全直販への移行
昨年から農協出荷をゼロにし、大手ECモールと自社直販サイトを複数併用するスタイルへ移行。単価アップと直接の関係づくりを意識し、ネット販売は年間約1,000万円弱の水準です。
Step 4:気候変化に合わせて品種を見直す
ヒノヒカリで高温障害が出始め、にじのきらめきへ切り替え中。きぬむすめ・にこまる・ミルキークイーン・もち米と合わせ4〜5品種を栽培し、刈り時期も分散させています。
Step 5:暮らしの中に残る商品で差別化する
2合入りのオリジナルパッケージを記念品として展開し、お米が日々の食卓に登場することで記憶に残る仕組みを設計。価格競争ではなく価値で選ばれる直販ブランドを育てています。

参考・出典

  • 取材農家ご本人の発言・公式情報(取材時点)
  • 農林水産省・各都道府県農産物統計
  • コメボウJOURNAL編集部によるオンライン取材

※本記事の情報はコメボウJOURNAL取材時点のものです。最新情報は各公式サイト・公式SNSをご確認ください。

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この記事を書いた人

コメボウJOURNAL編集部のアバター コメボウJOURNAL編集部

コメボウJOURNAL編集部。全国の米農家21名のオンライン取材を経て、「全国の米農家と消費者・飲食店が、直接つながる」をミッションに発信。2026年に農業DXサービス「コメボウ」を立ち上げ、取材と仕組みづくりの両軸で米農家の経営を支援している。

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