「お米を作れるようになったけど、どうやって売ればいいの?」
新規就農者にとって、栽培技術と同じくらい大切なのが「販売」です。どれだけ美味しいお米を作っても、売り先がなければ収入にはなりません。
お米の販売ルートは実はたくさんあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。最初から全部やる必要はありません。自分の状況に合ったルートを選び、少しずつ広げていくことが大切です。
この記事では、新規就農者の方に向けて、お米の主要な販売ルートを一つずつ解説します。
販売ルート1:JAへの出荷

概要
最も伝統的な販売方法が、JA(農業協同組合)への出荷です。収穫したお米をJAに持ち込み、買い取ってもらいます。
メリット
- 確実に買い取ってもらえる:作った分だけ売れる安心感があります
- 販売の手間がかからない:営業活動やお客さん対応が不要です
- 大量出荷に対応できる:何トンでも受け入れてもらえます
- 農業資材の購入や融資など、JAの総合サービスが利用しやすくなる
デメリット
- 買取価格が低い:市場の相場に連動するため、直販より収入は低くなりがちです
- 自分のブランドが作りにくい:JAのお米として出荷されるため、個人農家の名前は表に出ません
こんな人におすすめ
就農1〜2年目で、まずは安定した収入を確保したい方。全量JA出荷からスタートし、慣れてきたら一部を直販に回していくのがおすすめです。
販売ルート2:道の駅・直売所での販売

概要
地元の道の駅や農産物直売所にお米を出品する方法です。消費者と近い距離で販売できるのが特徴です。
メリット
- 手軽に始められる:出品登録をすれば、あとは商品を持ち込むだけ
- お客さんの反応が直接分かる:売れ行きや感想をすぐに把握できます
- JA出荷より高い価格で売れることが多い
デメリット
- 販売手数料がかかる:売上の15〜20%程度が手数料として引かれます
- 売れ残りリスクがある:持ち込んだ分が必ず売れるとは限りません
- 品出しや在庫管理の手間がある
こんな人におすすめ
地元のお客さんに自分のお米を知ってもらいたい方。対面での販売経験を積みたい新規就農者にも向いています。
販売ルート3:ネットショップでの直販

概要
BASEやSTORES、自前のネットショップを使って、全国のお客さんに直接お米を販売する方法です。
メリット
- 自分で価格を決められる:中間マージンがないため、利益率が高い
- 全国に販路が広がる:地元だけでなく、全国のお客さんに届けられます
- 自分のブランドを築ける:農園の名前やストーリーで差別化できます
デメリット
- 集客が大変:ショップを作っただけではお客さんは来ません。SNSやブログでの情報発信が必要です
- 梱包・発送の手間がかかる:注文ごとに個別対応が必要です
- トラブル対応を自分でやる必要がある
こんな人におすすめ
SNSでの発信が好きな方、自分のブランドを作りたい方。少量でも高い利益率で販売したい新規就農者に向いています。
販売ルート4:ふるさと納税の返礼品

概要
自治体のふるさと納税の返礼品としてお米を登録する方法です。寄付者に対してお米を発送します。
メリット
- まとまった量が売れる:人気が出れば、年間数百件の注文が入ることも
- 新規のお客さんに知ってもらえる:ポータルサイト経由で全国からの注目を集められます
- 安定した販路になる
デメリット
- 自治体との調整が必要:申請手続きや条件のすり合わせに時間がかかります
- 価格設定に制限がある:返礼品の調達費は寄付額の3割以下というルールがあります
- 繁忙期(年末)に注文が集中する
こんな人におすすめ
ある程度の出荷量を確保できる方。自治体との関係を築きながら、安定した販路を作りたい方。
販売ルート5:飲食店・小売店への卸販売

概要
地元の飲食店、料理店、こだわりの食品店などにお米を卸す方法です。
メリット
- 継続的な取引が期待できる:飲食店は毎月一定量のお米を仕入れるため、安定した売上になります
- 口コミが広がる:「あの店で食べたお米が美味しかった」という評判が広がります
デメリット
- 営業活動が必要:自分で飲食店を回って提案する必要があります
- 卸価格はやや低め:直販よりは安くなりますが、JAよりは高いことが多いです
- 品質への要求が厳しい
こんな人におすすめ
地元の飲食店との繋がりがある方、営業活動に抵抗がない方。安定した大口の取引先を作りたい新規就農者に向いています。
販売ルート6:マルシェ・イベントでの販売

概要
ファーマーズマーケットやマルシェ、地域のイベントに出店してお米を販売する方法です。
メリット
- お客さんと直接話せる:栽培のこだわりを直接伝えられます
- ファンを作りやすい:対面での出会いは、ネット販売よりも強い絆を生みます
- 他の農家さんとのネットワークが広がる
デメリット
- 出店料や交通費がかかる:利益が出るまでに時間がかかることも
- 天候に左右される
- 準備と当日の拘束時間が長い
こんな人におすすめ
人と話すことが好きな方。お米のファンを直接作りたい新規就農者にぴったりです。
販売ルート7:取材した2人の農家さんが選んだ、販路の組み合わせ方

ここまで6つの販売ルートを紹介してきましたが、実際の農家さんは1つのルートだけに絞っているわけではありません。複数のルートをうまく組み合わせて、リスクを分散しながら手取りを最大化しているのが現場のリアルです。
コメボウJOURNALで取材させていただいた2人の農家さんを例に、販路の組み合わせ方を見てみましょう。
ケース1:しみず農園・清水正宣さん(新潟)── 「個人+飲食店+EC」の多販路モデル
新潟で7代続く米農家の後継ぎ、清水正宣さん。宮崎出身で東京で音楽・不動産を経験したあと、新潟に移住して米づくりの世界へ入った32歳です。
しみず農園が栽培しているのは米7ha+野菜6haの家族経営規模。販売ルートは大きく3本柱です。
- 個人のお客さん:売上全体の7〜8割(リピーターがベース)
- 飲食店への卸:2〜3割(京都の料亭など、品質重視のお店)
- EC(食べチョク・新潟直送・メルカリShops):新規顧客の獲得窓口
清水さんが取材のなかで語っていたのは、「自分たちで販売した方が利益的に大きいなっていうのと、やっぱり直接お客さんに販売して、反応が直で返ってくるっていうのが大きいなと」という言葉。個人のリピーターで7〜8割を占める構造は、新規就農者にとって一つのゴールイメージになります。
一方で、ネット販売の難しさも率直に話してくれました。「ネット販売は大変さもありますね。自分のところを選んでもらうっていうのは。でも口コミが一番強いなっていうのは実感してます」。ルートを増やせば増やすだけ、運用の手間も増えるというのは、現場からのリアルな声です。
ポイントは、いきなり全部のルートを立ち上げていないこと。家業を継ぐ前から築いてきた個人顧客との関係をベースに、飲食店とECを段階的に増やしていった形です。
👉 詳しいインタビューはこちら:宮崎から新潟へ。音楽を手放した男が、しみず農園の7代目として田んぼを守ることを選んだ
ケース2:農業福島園・福島光志さん(福岡)── 450顧客の「直販特化モデル」
もう一人は、福岡県で25haの自然栽培米を手がける農業福島園・福島光志さん。18年間、農薬を一切使わずにお米を作り続けているベテランです。
福島園の販売ルートはほぼ100%が直販。約450名の個人顧客が主力で、JA出荷には頼っていません。
- 個人直販:売上の大部分(450顧客のリピート購入)
- 自然栽培というブランド力で、市場相場より高い価格設定が可能
- 広告費ほぼゼロ(お客さん同士の紹介で広がっていく)
福島さんは取材のなかで、「もう最初から全部直販をするって決めてやってましたので」と、ぶれない方針を語ってくれました。
さらに、「うち”年間購入”っていう仕組みで1年間分のお米を確保しますよっていうので販売をしてるんですよね。なので固定客がいるので、あんまり集客ということに困ってないっていうのがありがたい話」とも。年間購入という独自の仕組みが、リピート前提のビジネスモデルを支えています。
新規就農者がいきなり450顧客を持つのは現実的ではありませんが、「直販一本に絞って、10年20年かけて顧客を積み上げる」というモデルは、多くの農家にとって参考になります。
👉 詳しいインタビューはこちら:あの昼寝が、人生を変えた。福岡・農業福島園が18年間、農薬を使わない理由
2つのケースから見えてくること
- 販路は組み合わせが基本。1本に絞らない方がリスクが小さい
- 新規就農直後はJA+α、経験を積んでから直販比率を上げていくのが現実的
- 価格で勝負しない。ブランド・ストーリー・品質で選ばれる農家を目指す
- リピーターが主力になる販路設計が長期的には最強
新規就農者は、どのルートから始めるべき?

新規就農者の方には、まずJA出荷で収入のベースを作りながら、もう1つの販売ルートを少しずつ試していくことをおすすめします。
直売所でお客さんの反応を見る、BASEでネットショップを開いてみる、マルシェに出店してみる——どれも小さく始められます。実際に売ってみることで、自分に合った販売スタイルが見えてきます。
販売ルートは一つに絞る必要はありません。複数のルートを組み合わせることで、リスクを分散しながら、少しずつ直販の比率を高めていけると理想的です。しみず農園の清水さんも、福島園の福島さんも、時間をかけて今のポートフォリオを築き上げています。
あなたが育てたお米を、必要としてくれる人のもとへ届ける方法は、きっと見つかります。
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