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“日々の積み重ね”が、米を育てる。新潟・弥彦 石井農園 石井知治、10代目の米作り

2026 4/27
インタビュー
コシヒカリ こがねもち つきあかり こしいぶき 新潟県 弥彦村 10代目 家族経営 有機質肥料 直販 加工品

新潟県弥彦村 石井農園 ── 石井知治さん


新潟県弥彦村。越後平野の一角、弥彦山を望む田園地帯で、代々受け継がれてきた田んぼを守り続けている米農家がある。

石井農園・石井知治さん。屋号は「弥吾兵衛(やごべえ)」。初代は約300年前に遡り、石井さんは10代目にあたる。

派手な言葉も、特別な取り組みもない。あるのは、日々の積み重ね。その静かな誠実さが、石井農園の米を支えている。


300年続く”弥吾兵衛”の田んぼ

石井農園の歴史を聞くと、石井さんは静かにこう答えた。

「初代は約300年前で、私でちょうど10代目になります」

屋号は「弥吾兵衛(やごべえ)」。お寺に残っていた代々の家系図を祖父が起こしてくれたことで、300年の歴史が今も紙の上でたどれるという。

江戸時代から続いてきた田んぼの上に、石井さんは今、立っている。


代々の田んぼを、受け継いで

石井農園は、いま11ヘクタールの田んぼを手掛けている。

耕作面積は、少しずつ広がってきた。本人が「広げた」というより、周囲から預けていただいたものが大きいという。

「営農環境の変化や、地域の方々とのつながりの中で、田んぼを預けていただく機会が増えていった──そういう感覚です」

大げさな話ではない。地域の中で、ごく自然に、助け合いながら、田んぼを受け継いでいく──そんな日々の営みの延長線上に、石井農園の11ヘクタールがある。


4品種と、日々の丁寧な米作り

石井農園で栽培しているのは4品種。

主力は従来型のコシヒカリ。それに加えて、もち米のこがねもち、早稲品種のつきあかり、新潟の独自品種であるこしいぶき。

米作りで大切にしているのは、特別なことではなく、当たり前のことを丁寧に積み重ねることだ。

県認証の取得、農薬使用量を減らすための温湯消毒、有機質肥料の使用。どれも決して特別な手法ではなく、「良い米を作るために続けている日常の積み重ね」である。

「効率的に、高品質の米を、安定して作れるような技術の確立を目指しています」

付加価値を”盛る”のではなく、技術を地道に磨く。石井農園の誠実さが、ここにある。


秋耕をお休みして、田植え後の管理に力を入れる

石井さんの米作りで、もう一つ印象的な判断がある。

「稲刈りの後に、わらと土を混ぜて分解を促す秋の耕耘作業(秋耕)というのがあるんです。一般的には”やった方が良い”とされる作業なんですけど、うちではそれをお休みしています」

理由は、新潟という土地の気候にある。

「新潟の冬は土が乾かないんです。秋に耕耘してしまうと、春になっても乾かなくて、トラクターが入らない。作業性が悪くなってしまう」

ただ、やめただけではない。その代わりの丁寧な仕事がある。

「秋の耕耘をお休みする代わりに、田植え後の管理に力を入れています」

前年の稲わらなど、土中の有機物が分解されるタイミングに合わせて、ガス抜きや中干しなど、丁寧な水管理と土壌づくりを徹底する。

「そうすることで、健康で丈夫な稲を育てることを目指しています」

“やらない”ことは手抜きではない。やるべき時に、やるべきことを、丁寧にやる──そのために、場所と時間を選んでいる。


猛暑の夏、米が白くなった

農業を続けるうえで、何が一番大変か。その問いに、石井さんは一つの年のことを思い出した。

「3年前(2023年)の夏の猛暑のことは、今でも忘れられません。新潟県の米の品質が壊滅的になって、うちの米も白くなってしまった(乳白粒が多く発生して)んです」

何年もかけて積み上げてきたものが、一夏の気候で崩れる。

農業の一番の難しさは、品質まで含めた「安定生産」にある、と石井さんは語る。どれだけ技術を磨いても、自然の前では無力な瞬間がある。

それでも、石井さんは田んぼに立ち続ける。


一番のモチベーションは、お客さんからの”一通”

では、農業を続けていて一番良かったことは何か──。

「直売をやっているから、お客さんとコミュニケーションが取れる。これが一番ですね」

販売のメインは個人のお客様と飲食店。その他に民間の集荷業者や米販売会社にも卸している。

直販が中心だから、お客さんからの声が直接届く。

「お客さんからのメッセージが、地味な作業の多い農業の中で、大きなモチベーションになっています」

中でも嬉しいのが、「幼い頃から石井農園のお米を食べて大きくなった」という話を聞くとき。

一粒一粒の米が、誰かの日常に、誰かの記憶に、そっと入り込んでいる。石井さんはその手応えを、メッセージの一通一通から受け取っている。


足腰の強い経営を、次の世代へ

10代目としての石井さんの視線は、すでに次の世代を見据えている。

「これから目指しているのは、足腰の強い経営体制です。個人経営のままだと、永続性が難しいので」

計画しているのは、法人化。そして加工品のラインナップ拡充──すでにパックご飯・玄米餅・甘酒・米麹の製造を始めている。さらに栽培面積の拡大、生産性向上のための設備投資。

石井さんが今、設備投資に力を入れているのは、そのための”体制作り”の真っ最中だからだ。

「今のお客さんに、これから先も長く、安定してお米をお届けできる体制を作りたい」

300年続いてきた田んぼを、ここで一度”足腰”から作り直す。10代目としての、静かで確かな覚悟がそこにある。

最後に、消費者へのメッセージを聞いた。

「常連のお客様には、こうやって農家を続けられていることへの感謝をお伝えしたいです。そして、これから出会うお客様には──」

石井さんは、少し言葉を選んでから、こう続けた。

「良い農家と知り合えて良かったと、そう思っていただけるように、情報発信も米作りも、続けていきたい。そう思っています。」

Instagram、YouTube、X、ブログ。SNSは全部、自分で運営している。農園通信にはSNSのQRコードを載せて、お客さんとの接点を一つずつ増やしている。

300年の田んぼの上に、日々の積み重ねが、今日も静かに重なっていく。


■ 農家プロフィール

🏡 石井農園(屋号:弥吾兵衛/やごべえ)
👤 石井知治 ── 10代目(約300年続く米農家)
📍 新潟県弥彦村
🌾 コシヒカリ・こがねもち・つきあかり・こしいぶき(4品種)
✨ 11ヘクタール/直販中心(個人・飲食店・集荷業者・米販売会社)/県認証取得・温湯消毒・有機質肥料/パックご飯・玄米餅・甘酒・米麹などの加工品展開/Instagram・YouTube・X・ブログ全運営
🔗 https://www.ishii-nouen.jp/

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