「毎回SNSで告知して、注文を受けて、入金を確認して、発送して……」
直販のたびにこの繰り返し。正直、大変ですよね。そんな農家さんにぜひ取り入れてほしいのが「定期便」の仕組みです。
定期便とは、お客さんに毎月(または隔月)自動でお米を届けるサービスのこと。一度申し込んでもらえれば、解約されるまで継続的に売上が立ちます。収入が安定するだけでなく、毎回の注文対応の手間も大幅に減ります。
この記事では、お米の定期便を始めるための具体的な方法をお伝えします。
定期便のメリット

売上が安定する
単発の注文だけでは、月ごとの売上にばらつきが出ます。定期便なら毎月決まった数量が出荷されるため、収入の見通しが立てやすくなります。在庫管理の計画も立てやすくなるのは、農家さんにとって大きなメリットです。
注文対応の手間が減る
毎回の注文受付、入金確認、連絡のやりとり。これらの作業が定期便なら自動化できます。浮いた時間を、お米づくりやお客さんへのサービス向上に使えるようになります。
解約率は思ったより低い
「すぐに解約されてしまうのでは」と心配される方もいますが、美味しいお米の定期便は解約率が低い傾向にあります。毎日食べるお米だからこそ、「買い忘れがなくて助かる」「届くのが楽しみ」と感じてくれるお客さんが多いのです。
定期便の始め方

ステップ1:プランを決める
まずは、どんなプランを用意するかを決めましょう。シンプルに始めるなら、以下のような設計がおすすめです。
- お届けサイクル:毎月 or 隔月(2ヶ月に1回)
- 重量:5kg / 10kg の2パターン
- 品種:メインの品種1種類から始める
最初からプランを増やしすぎると、管理が大変になります。まずは1〜2プランでスタートし、お客さんの声を聞きながら増やしていくのがおすすめです。
ステップ2:価格を設定する
定期便の価格設定で大切なのは、「お客さんにとってお得感があること」と「農家さんにとって採算が取れること」のバランスです。
一般的には、単発購入の価格から5〜10%程度割引した価格を定期便価格に設定するケースが多いです。送料込みの価格にすると、お客さんにとって分かりやすく、お得感も出やすくなります。
ステップ3:ツールを選ぶ
定期便に対応したネットショップツールを使えば、自動決済・自動配送管理ができます。
BASEの定期便機能 BASEには「定期便App」があり、追加するだけで定期販売が可能になります。月額費用は無料で、通常の販売と同じ手数料のみ。すでにBASEを使っている農家さんなら、すぐに始められます。
STORESの定期販売 STORESにも定期販売機能があります。フリープランでも利用可能で、月ごと・週ごとなど柔軟なサイクル設定ができます。
手動管理で始める方法 ツールを使わず、Excelやスプレッドシートでお客さんリストを管理し、毎月手動で発送する方法もあります。定期便のお客さんが10人以下なら、この方法でも十分回せます。
ステップ4:お客さんを集める
定期便を始めたら、まずは既存のお客さんに案内しましょう。過去に2回以上購入してくれた方は、定期便に切り替えてくれる可能性が高いです。
案内の方法は以下が効果的です。
- 商品発送時に定期便の案内チラシを同梱する
- LINE公式アカウントで定期便の案内を配信する
- ネットショップのトップページで定期便を目立つ位置に掲載する
- SNSで「定期便始めました」と告知する
長く続けてもらうための3つのコツ

1. 季節のお手紙を添える
定期便がルーティンになると、「ただ届くだけ」の存在になってしまうことがあります。季節ごとのお手紙やメッセージカードを同梱して、毎回「届くのが楽しみ」と感じてもらえる工夫をしましょう。
2. たまに「おまけ」を入れる
予告なしに、少量の別品種のお米や、お米を使ったお菓子などを同梱すると、サプライズ感があって喜ばれます。コストは小さくても、お客さんの満足度と継続率は大きく上がります。
3. 解約を恐れない
お客さんのライフスタイルの変化で、解約は必ず起こります。解約時には「ありがとうございました。またいつでも再開できますので、お気軽にご連絡ください」と温かく送り出しましょう。気持ちの良い対応が、将来の再開や口コミにつながります。
年間購入450人と、60トン全量販売──農業福島園と中山農園が証明した定期便の力

ここまで定期便の始め方を書いてきましたが、定期便がうまくいくとどうなるのか。コメボウJOURNALで取材した2人の農家さんの数字と言葉から、定期便の持つ力を具体的に見ていきます。
農業福島園・福島光志さん(福岡)──「年間購入」で450人の固定客を作った仕組み
福岡で25haの自然栽培米を手がける農業福島園・福島光志さんは、約450名の個人顧客を「年間購入」という独自の仕組みでまとめています。
取材で福島さんは、この仕組みをこう説明してくれました。
「うち”年間購入”っていう仕組みで1年間分のお米を確保しますよっていうので販売をしてるんですよね。なので固定客がいるので、あんまり集客ということに困ってないっていうのがありがたい話」
1年分の米を前払いで予約購入してもらう──これは、毎月・隔月の定期便の「究極進化版」です。
- 450名 × 年間購入=毎年安定した売上が計算できる
- 集客コストほぼゼロ(毎月新規を追いかけなくていい)
- お客さん側も、1年分まとめて買う安心感
福島さんはさらに、「もう最初から全部直販をするって決めてやってましたので」とも語ってくれました。販路を直販一本に絞り込む覚悟があったから、年間購入という強い仕組みが作れた──これが一番大事な教訓です。
中山農園(北海道浦河)──60トンの玄米を全部さばく、リピート前提の特別栽培
もう一人は、競走馬の町として知られる北海道浦河町で12年間、特別栽培米を作り続ける中山農園さん。生産量は年間60トン。これを全部、定期購入・直販でさばき切っています。
中山さんが取材で語ったのは、特別栽培に切り替えた後のお客さんの反応です。
「特別栽培に切り替えてから、お客様に美味しくなったって言っていただけるようになりました」
定期便というビジネスモデルが機能するかどうかは、結局ここに尽きます。「毎回買いたいと思ってもらえる味」を出せるかどうか。中山農園は、特別栽培に舵を切ったことで、それを手に入れました。
ただし、中山さんは綺麗事だけではないことも率直に話してくれました。
「60トンの玄米を全部販売できるかっていうプレッシャーは大きかったです」
60トン全部を毎年売り切る──これは、単発の注文を積み上げるだけでは絶対に成立しない規模です。定期便という仕組みと、毎年戻ってきてくれるリピーターがいて、初めて60トンが動きます。
2人の数字から分かる、定期便が”安定する”理由
- 450人 × 年間購入(福島さん)= 毎年のお米の行き先が決まっている
- 60トンを全量直販(中山農園)= JA相場に縛られない価格設定が可能
- 共通点は「新規集客に時間を使わなくていい」こと
- その分、品質向上とお客さん対応に時間を使える→ さらにリピート率が上がる好循環
定期便は「売り方」ではなく、農家の1年の時間の使い方を根本から変える仕組みです。集客で走り回る時間が、お米そのものと向き合う時間に変わる──そこに定期便の本当の価値があります。
明日から、何人のお客さんに声をかけますか?

福島さんも中山さんも、最初から450人や60トンを相手にしていたわけではありません。最初のお客さん1人、そこから2人、10人、50人──地道な積み重ねの末に、今の数字があります。
定期便を始める一番いい方法は、「今いるお客さんに、来年も買ってくれますか」と聞くことです。1年分を予約してくれる人が10人いれば、それはもう立派な定期便の出発点です。
新しいお客さんを追いかける前に、いま美味しいと言ってくれている人に、”続き”を提案する。これが、定期便を育てる一番の近道です。
関連記事
そのほかの関連記事
よくある質問|この記事のテーマについて
ご質問をクリック(タップ)すると答えが開きます。
Q. お米の定期便とはどんな仕組みですか?
Q. 定期便の最大のメリットは何ですか?
Q. 定期便はすぐに解約されてしまいませんか?
Q. 定期便のプランはどう設計すればいいですか?
Q. 定期便の価格はどう設定すべきですか?
Q. 定期便はどんなツールで管理すればいいですか?
Q. 定期便のお客様はどう集めればいいですか?
Q. 定期便を始めるのに最低何人のお客様が必要ですか?
Q. 定期便の発送日はどう決めるべきですか?
Q. 定期便の支払いはどう設定すればいいですか?
Q. お客様が一時休止したい場合は対応できますか?
Q. 定期便の品種は固定すべきですか?
Q. 定期便の年間継続率はどのくらい?
Q. 定期便とふるさと納税の定期便はどう違いますか?
Q. コメボウJOURNALでは定期便事例の紹介はありますか?
米農家が定期便を始める5ステップ
各ステップをクリック(タップ)すると詳細が開きます。
Step 1:シンプルなプランを1〜2種類設計する
Step 2:単発価格より5〜10%割安に価格設定する
Step 3:決済と発送の自動化ツールを導入する
Step 4:既存リピーターに定期便を案内する
Step 5:お客様の声を集めてプランを改善する
参考・出典
- 農林水産省・各都道府県農産物統計
- 業界団体公開データ
- コメボウJOURNAL編集部によるオンライン取材記事
※本記事の情報はコメボウJOURNAL編集時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
