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“アメリカ5年から、湯沢のあきたこまちへ”。秋田・湯沢市 合同会社カネマタファーム 鈴木アヒナ麻由、玄米・直販・加工で広げる女性農家の道

2026 7/07
インタビュー 品種ガイド 産地ガイド 規模拡大・法人化 販路・直販EC
カネマタファーム アイキャッチ
あきたこまち 秋田県 湯沢市 合同会社 女性農家 ドローン散布 加工食品 玄米 名水百選 卸売り

秋田県湯沢市 合同会社カネマタファーム ── 鈴木アヒナ麻由さん


秋田県湯沢市。奥羽山脈の南、名水百選にも選ばれた水資源が豊かな米どころに、2026年現在、約30町歩のあきたこまちを育てる女性農家がいる。

合同会社カネマタファーム・鈴木アヒナ麻由さん。母体である株式会社鈴木又五郎商店の専務取締役として、カネマタファームの現場と経営を担っている。

けれど、鈴木さんが今この田んぼに立つまでの道のりは、少し変わっている。

アメリカ・カリフォルニアで約5年。健康と美容の世界でセラピストとして働いていた女性が、なぜ秋田の米農家になったのか。

そのきっかけは、一時帰国で口にしたあきたこまちの玄米だった。


アメリカ5年、玄米と健康の世界から

カネマタファーム - アメリカ5年、玄米と健康の世界から

鈴木さんは、家業を継ぐ前は約5年間アメリカに住んでいた。仕事は健康・美容の業界。セラピストとして、海の向こうで日々を重ねていた。

その世界で出会ったのが、玄米だった。

「アメリカで健康意識の高い方々の間では、玄米がよく食べられていたんです」

体に向き合う仕事をしている人ほど、食にこだわる。海外で出会った玄米食の文化が、鈴木さんの中で「お米」という存在を改めて捉え直すきっかけになった。


一時帰国で出会った、あきたこまちの玄米

カネマタファーム - 一時帰国で出会ったあきたこまちの玄米

転機は、一時帰国で訪れた。

家族と過ごす中で、何気なく口にした地元の玄米。それが、アメリカで食べていたカリフォルニア米の玄米とは、まったく違う味だった。

「カリフォルニア米の玄米とは、全然違う美味しさだったんです」

湯沢市のあきたこまち。その玄米の美味しさが、鈴木さんに帰国を決断させる。健康・美容の現場で見てきた「玄米を求める人々」と、地元の米。両者をつなげる役割が、自分にあるかもしれない。

帰国後、鈴木さんは家業の鈴木又五郎商店で働き始めた。そして平成29年(2017年)、合同会社カネマタファームの設立に至る。


母体「鈴木又五郎商店」と、肥料のプロが米を見る

カネマタファーム - 母体 鈴木又五郎商店と肥料のプロが米を見る

カネマタファームを語る上で外せないのが、母体の株式会社鈴木又五郎商店の存在だ。

鈴木又五郎商店は、お米の卸小売業者であると同時に、肥料・農薬・農業資材等を扱う会社でもある。だからこそ、カネマタファームの米作りには、独自の強みがある。

「私たちの母体には、農業博士や肥料のプロがいるんです」

無農薬栽培ではない。けれど、肥料の質、使うタイミング、その時々の状況判断──プロの目が、米の品質を支えている。

「肥料の質だけじゃなくて、いつ使うか、どう判断するか。それが米の品質に大きく影響するんです」

派手な栽培方法ではなく、専門知識の積み重ねで品質を作る。それが、カネマタファームのスタイルだ。


あきたこまち一本という選択

カネマタファーム - あきたこまち一本という選択

カネマタファームが現在栽培しているのは、あきたこまちのみ(多品種化の可能性も視野に入れている)。

設立当初は、米以外の野菜や果物、秋田県の新品種「サキホコレ」なども検討された。けれど、最終的に行き着いたのは「あきたこまち一本」という選択だった。

理由は、効率化だ。

乾燥調整、選別、出荷。これらの作業を一括で行うには、品種を絞った方が圧倒的に効率がよい。複数品種を扱えば、機械の切り替えや管理コストが嵩む。30町歩を4〜5人で回す体制では、シンプルに整える方が品質も上がる。

そして何より、湯沢市のあきたこまちには、地域ブランドとしての確かな品質がある。

「湯沢市のお米は、土壌も水も恵まれていて、秋田県内でも食べ比べれば違いが分かるほどなんです」

奥羽山脈から流れる、名水百選にも選ばれた水。その水で育つあきたこまち。地域の優位性を、品種統一によって最大限に活かす。それが、カネマタファームの戦略だ。


自分たちで販路を作る

カネマタファーム - 自分たちで販路を作る

カネマタファームの販売構造も、母体・鈴木又五郎商店の歴史を活かしたものだ。

「JAには出荷していません。ほぼ100%、自社で販売しています」

販路の内訳は、問屋・卸業者が8〜9割。残りは、ECサイトと外食産業への直接販売。

卸し先への出荷はフレコンの玄米が多く、外食産業へは10kg単位の精米や定期便など、柔軟な販売形態を組み合わせている。

東京や大阪での販売会に出ると、湯沢市の米を知っている消費者から声をかけられることもあるという。

「湯沢のお米が美味しいことをご存知の方が、直接声をかけてくださるんです」

地域ブランドへの誇り。それが鈴木さんの原動力になっている。


付加価値で、価格変動に強いビジネスへ

カネマタファーム - 付加価値で 価格変動に強いビジネスへ

カネマタファームの田んぼは、2026年現在 約30町歩。

当初からこの規模だったわけではない。地域の高齢化が進む中で、農業を続けられなくなった農家からの受託で、徐々に拡大してきた経緯がある。

けれど、これ以上の規模拡大は考えていない。

「30町歩をこれ以上広げるつもりはないんです。安定した価格と数量で、消費者の方にお届けすることが使命だと思っていて」

その代わりに、新しいビジネスステップを構想している。

米そのものの販売だけでなく、カネマタファームの米を使った加工食品事業。

「米は価格変動の波が大きいので、加工品として販売することで一定の価格で売れる強い商品にしたいんです」

カネマタファームが展開する米加工商品には、共通する一つのコンセプトがある。

「おいしくて、健康と美容に良いもの」

その代表的な商品が、「乳酸菌栽培あきたこまち玄米」と「HAPARICE(ハパライス)」。どちらも商標登録済の、独自ブランドだ。

基本となるのは、乳酸菌を使用して栽培したあきたこまちの玄米。これを加工することで、健康と美容に貢献する付加価値商品を世に送り出している。

母体の鈴木又五郎商店が手がける薬膳粥、玄米生麹、玄米味噌、米粉と並んで、カネマタファームならではの加工品ラインナップが広がっていく。

規模ではなく、付加価値で。それが、鈴木さんの選んだ道だ。


ドローン300町歩、稲作以外の協力も

カネマタファーム - ドローン300町歩 稲作以外の協力も

カネマタファームは、米を作るだけの会社ではない。

2026年現在、自社の田んぼは30町歩。一方で、ドローンによる散布作業は、自社分も含めて合計約300町歩を担っている(自社30町歩+外部約270町歩)。ドローンの販売や整備も手がけ、稲作以外の領域でも事業を広げている。

「ドローンを使っても人の手は必要なんです。でも、ヘリコプターでの散布より格段に作業が楽になりました」

テクノロジーの導入は、効率化のためだけではない。地域の農家の負担を減らし、続けられる農業の形を作ること。それも、カネマタファームの役割だ。

農業について、鈴木さんはこう言う。

「IT化やIoT化が進んでも、やっぱり人の手と目で確認しなければ分からないことが多いんです。農業は、人の手がなければ難しい産業」

テクノロジーで効率化しつつ、人の手を残す。そのバランスが、カネマタファームの強みだ。

最後に、消費者へのメッセージを尋ねた。

「価格が安定しない中でも、お米は栄養価が高くて、満腹感もあって、コストパフォーマンスに優れた食品なんです。日本の稲作農業が作っているお米を、たくさんの人に食べてほしい」

アメリカで玄米と出会い、湯沢のあきたこまちに帰ってきた。卸と直販と加工で、地域の米を未来へ繋いでいく。鈴木アヒナ麻由さんは、今日も湯沢市の田んぼに立っている。


■ 農家プロフィール

鈴木アヒナ麻由 プロフィール

🏡 合同会社カネマタファーム
👤 鈴木アヒナ麻由(すずき あひな まゆ)── 株式会社鈴木又五郎商店 専務取締役。約5年間アメリカに在住し、健康・美容業界でセラピストとして勤務。一時帰国で出会ったあきたこまちの玄米の美味しさをきっかけに帰国し、家業の株式会社鈴木又五郎商店に参画。平成29年(2017年)に合同会社カネマタファームを設立。
📍 秋田県湯沢市大町1-2-26
🌾 現在あきたこまちのみ(多品種化検討中)
✨ 2026年現在 約30町歩(受託で拡大)/4〜5人体制/母体・株式会社鈴木又五郎商店(米卸小売+肥料農薬・農業資材等/代表取締役:父)/農業博士・肥料のプロが米作りを監修/JA出荷なし・自社販売中心(問屋8〜9割+EC+外食産業)/加工商品「乳酸菌栽培あきたこまち玄米」「HAPARICE」(ともに商標登録済)/2026年現在 ドローン散布合計約300町歩(自社30町歩含む)/ドローン販売・整備も
🔗 https://www.kanemata-suzuki.com/

▶ ほかの米農家さんの取材から見えてきた経営の本質は、米農家インタビュー21人の集約完全ガイドにまとめています。あわせてどうぞ。

よくある質問|この記事のテーマについて

ご質問をクリック(タップ)すると答えが開きます。

Q. この記事(米農家の転身ストーリー)は、どんな人に向いていますか?
A. 向いている人=就農や転身に興味がある/作り手の物語が好き/秋田のお米に興味がある。
あまり向いていない人(別の手が良い場合も)=物語に関心がない/転身を考えていない/産地にこだわらない。作り手の歩みに触れたい人向けです。
Q. 合同会社カネマタファームはどこにある米農家ですか?
A. 秋田県湯沢市に拠点を置く米農家です。奥羽山脈の南、名水百選にも選ばれた水資源が豊かな米どころに位置しています。2026年現在、約30町歩のあきたこまちを4〜5人体制で育てており、専務取締役の鈴木アヒナ麻由さんが現場と経営を担っています。母体は株式会社鈴木又五郎商店です。
Q. 鈴木アヒナ麻由さんが米農家になったきっかけは何ですか?
A. アメリカ・カリフォルニアでセラピストとして約5年間働いていた時に、健康意識の高い人々が玄米を食べる文化に触れたことがきっかけです。一時帰国で口にした地元・湯沢市のあきたこまち玄米が、カリフォルニア米の玄米とは全く違う美味しさだったことから帰国を決断し、2017年(平成29年)にカネマタファームを設立しました。
Q. カネマタファームはどんな品種のお米を作っていますか?
A. 現在はあきたこまち一本で栽培しています。乾燥調整・選別・出荷の効率化と、湯沢市のあきたこまちが持つ地域ブランドとしての品質を最大限活かすため、品種を絞る選択をしました。多品種化の可能性も視野に入れていますが、当面はシンプルに整える方が品質も上がるとの判断です。
Q. カネマタファームの米作りの特徴は何ですか?
A. 母体の鈴木又五郎商店に在籍する農業博士や肥料のプロが米作りを監修している点が大きな特徴です。無農薬栽培ではありませんが、肥料の質・使うタイミング・状況判断などプロの目が品質を支えています。派手な栽培方法ではなく、専門知識の積み重ねで品質を作るスタイルです。
Q. カネマタファームのお米はどこで買えますか?
A. JAには出荷せず、ほぼ100%自社で販売しています。販路の内訳は問屋・卸業者が8〜9割、残りがECサイトと外食産業への直接販売です。卸し先へはフレコンの玄米、外食産業へは10kg単位の精米や定期便など、柔軟な販売形態を組み合わせて届けています。
Q. カネマタファームの加工商品にはどんなものがありますか?
A. 代表的な商品が「乳酸菌栽培あきたこまち玄米」と「HAPARICE(ハパライス)」で、どちらも商標登録済の独自ブランドです。基本となるのは乳酸菌を使用して栽培したあきたこまち玄米で、健康と美容に貢献する付加価値商品として展開しています。母体の薬膳粥・玄米生麹・玄米味噌・米粉と並ぶラインナップです。
Q. なぜ加工食品事業に力を入れているのですか?
A. 米は価格変動の波が大きいため、加工品として販売することで一定の価格で売れる強い商品を作る狙いがあります。「おいしくて、健康と美容に良いもの」というコンセプトのもと、米そのものの販売に加えて付加価値商品を展開することで、価格変動に強いビジネス構造を目指しています。
Q. カネマタファームはこれ以上規模を拡大しますか?
A. 30町歩からこれ以上の規模拡大は考えていません。安定した価格と数量で消費者に届けることを使命と捉えており、規模追求ではなく付加価値追求の方向に舵を切っています。受託で30町歩まで拡大してきた経緯はありますが、今後は加工商品事業など別の軸で成長を目指す方針です。
Q. 湯沢市のあきたこまちの特徴は何ですか?
A. 湯沢市は土壌も水も恵まれた米どころで、奥羽山脈から流れる名水百選の水で米が育つ環境です。秋田県内でも食べ比べれば違いが分かるほどの品質があるといわれており、地域ブランドとしての確かな評価を受けています。鈴木さんも「秋田県内でも食べ比べれば違いが分かる」と語っています。
Q. カネマタファームはドローン散布もやっているのですか?
A. 2026年現在、自社30町歩を含めて合計約300町歩のドローン散布作業を担っています。自社30町歩+外部約270町歩という規模です。さらにドローンの販売や整備も手がけており、稲作以外の領域でも事業を広げています。ヘリコプター散布より格段に作業負担が軽くなったとのことです。
Q. カネマタファームの母体・鈴木又五郎商店はどんな会社ですか?
A. お米の卸小売業者であると同時に、肥料・農薬・農業資材等を扱う会社です。代表取締役は鈴木アヒナ麻由さんの父親が務めています。農業博士や肥料のプロが在籍しており、その専門知識がカネマタファームの米作り品質を支える独自の強みとなっています。
Q. なぜJAに出荷していないのですか?
A. 母体である鈴木又五郎商店が長年お米の卸小売業を営んできた歴史を活かし、自社で販路を持っているためです。問屋・卸業者への出荷を中心に、ECサイト・外食産業への直接販売を組み合わせる構造で、自社販売中心の運営が成立しています。
Q. カネマタファームのお米の販売会はありますか?
A. 東京や大阪で販売会に出展することがあります。湯沢市の米を知っている消費者から直接声をかけられることもあり、地域ブランドへの誇りが鈴木さんの原動力になっているといわれています。販売会は消費者との直接接点として活用されています。
Q. 農業のIT化についてどう考えていますか?
A. 鈴木さんは「IT化やIoT化が進んでも、やっぱり人の手と目で確認しなければ分からないことが多い。農業は人の手がなければ難しい産業」と語っています。テクノロジーで効率化しつつ、人の手を残すバランスがカネマタファームの強みになっています。
Q. カネマタファームから消費者へのメッセージは?
A. 「価格が安定しない中でも、お米は栄養価が高くて、満腹感もあって、コストパフォーマンスに優れた食品。日本の稲作農業が作っているお米を、たくさんの人に食べてほしい」と鈴木さんは語っています。アメリカで玄米と出会い湯沢のあきたこまちに帰ってきた経験から、米の価値を伝え続けています。

カネマタファームから学ぶ、米農家が付加価値で価格変動に強くなる5ステップ

各ステップをクリック(タップ)すると詳細が開きます。

Step 1:地域ブランドの優位性を見極める
湯沢市のあきたこまちのように、自分の地域が持つ土壌・水・気候の優位性を客観的に把握します。地域ブランドの強さが、品種選定と販売戦略の出発点になります。
Step 2:品種を絞って効率化する
カネマタファームのように品種を一本に絞ると、乾燥調整・選別・出荷を一括化でき、機械の切り替えや管理コストを抑えられます。小人数体制では特に有効と業界一般でいわれています。
Step 3:自社販路を組み立てる
JA出荷一本に頼らず、問屋・卸・EC・外食産業など複数の販売チャネルを組み合わせます。母体や既存ネットワークがあれば、それを活かした垂直的な販路設計が選択肢になります。
Step 4:加工商品で価格安定化を図る
米の価格変動リスクを下げるため、自社米を使った加工商品開発を検討します。商標登録済の独自ブランドや、健康・美容など明確なコンセプトを軸にすると差別化しやすい想定です。
Step 5:テクノロジーと人の手のバランスを取る
ドローン散布など効率化技術を導入しつつ、最終確認は人の手と目で行うバランス設計を意識します。地域の農家への作業受託など、稲作以外の事業展開も視野に入れます。

参考・出典

  • 農林水産省・各都道府県農産物統計
  • 業界団体公開データ
  • コメボウJOURNAL編集部によるオンライン取材記事

※本記事の情報はコメボウJOURNAL編集時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。

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この記事を書いた人

コメボウJOURNAL編集部のアバター コメボウJOURNAL編集部

コメボウJOURNAL編集部。全国の米農家21名のオンライン取材を経て、「全国の米農家と消費者・飲食店が、直接つながる」をミッションに発信。2026年に農業DXサービス「コメボウ」を立ち上げ、取材と仕組みづくりの両軸で米農家の経営を支援している。

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