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鬼ノ城のふもとで、7世代続く家族の農業。MsFineFarm・秋山款美、岡山・総社で紡ぐ”当たり前の積み重ね”

2026 4/22
インタビュー
きぬむすめ にこまる ミルキークイーン にじのきらめき 岡山県 総社市 7代目 家族経営 直販 鬼ノ城

岡山県総社市東阿曽 よしひろ農園(MsFineFarm)── 秋山款美さん


鬼ノ城のふもと。岡山県総社市東阿曽で、季節や時間によって表情を変える稜線の下、親子三人が、200年の時を超えて米を作り続けている。

足守川水系の豊かな水と、長い年月をかけて育まれてきた土。その恵みを受け、約200年、この土地で続いてきた家族の営み。

その6代目、秋山款美さんに話を聞いた。


三年前、息子が先に専業を選んだ

よしひろ農園が家族経営として今のかたちになったのは、ここ数年のことだ。

「三年前に息子が専業を始めて、去年から僕もサラリーマンを辞めて専業になりました」

秋山さん自身も、つい最近まで会社勤めをしながらの兼業農家。それが今では本人・息子・父親の三人体制。父は15年ほど前に定年退職し、以降は趣味として農業を続けてきた。

「父親はずっと息子を指導してくれていて、息子が専業になって規模が広がりました。今は3人で専業でやってます」

以前は5町ほどの規模だった田んぼは、専業化と共に11〜12町(11〜12ha)まで拡大。息子の”先行専業化”が、家族全体の動きを変えた。


父の”地道な積み重ね”が、農地を呼び寄せた

11haという規模は、一朝一夕で広がったものではない。

「父が長年続けてきた丁寧な田畑の管理があるんです。草刈りや畦の補修、水管理といった地道な作業を、日々欠かさず積み重ねてきた」

「ここなら任せられる」──近所の方々からそう言われ、お預かりする田んぼが少しずつ増えていった。

「農業は一朝一夕で成果が出るものではなく、積み重ねが後になって評価される仕事だと実感しています」

信頼は、数字ではないもので計られる。父の毎日の畦塗り、毎朝の水管理、周囲への気配り──そういった”見えない働き”が、11haという数字を生んだ。


当たり前を愚直にやる──神は細部に宿る

米作りで何を大切にしているか、と聞くと、秋山さんの答えはシンプルだった。

「当たり前のことを愚直にやること、これが全てです」

しっかり耕耘する。草や水の管理を徹底する。派手な新技術ではなく、基本に忠実であり続けること。

「神は細部に宿る、という考えに基づいています」

さらに、地域との連携も欠かせない。水路の管理や作業時期の調整は、周囲との協力があってこそ成り立つ。田んぼをしっかり管理することが地域の信頼につながり、その信頼が次の田んぼを任される根拠になる。農業は、一農家で完結するものじゃない──秋山さんは繰り返しそう話した。


農協出荷ゼロ。”直販1,000万円”への道のり

秋山さんが大きく舵を切ったのが、直販への完全移行だ。

「去年から農協への出荷をゼロにして、すべて自分たちで販売しています」

ネット販売を始めたのは5〜6年前。米騒動でネットでも個人販売でも米がよく売れるようになったことと、単価を上げるためだった。

直販チャネルは、大手ECモールと直販サイトを複数併用。昨年のネット販売売上は約1,000万円弱。お米そのものの質の高さで、値段が高くても選ばれてきた。

「今年は”米の熱が冷めた”感じもあって、新米の予約ペースは落ちています。ただ、リピーターがいるので売上が大きく落ちることはないと思っています」

販売データを見ると、顧客の1〜2割がリピーターで、8回以上リピートしているファンもいる。一度秋山さんの米に出会った人は、何度も戻ってくる。


「これなら忘れて帰る人がいない」── 2合パックという発想

直販の中で、秋山さんが独自に編み出したのが“2合入りオリジナルパッケージ”だ。この事業は、“MsFineFarm”という屋号で展開している。

「スナックやラウンジの周年祝い、会社のイベント記念品として、2合入りのお米を納入しています。パッケージは主催者さんが自由にデザインできる”その日だけの一袋“です」

実際に採用した主催者からは、こう言われたという。

「これなら忘れて帰る人がいないんです」

日用品の記念品は引き出しにしまわれて終わる。でも、お米は必ず食卓にのぼる。軽すぎず、重すぎず、持ち帰りやすい2合という量も好評だ。

毎日の暮らしに溶け込みながら、きちんと記憶にも残る──実用性と記念性を兼ね備えた、小さいけれど大きな発明。


気候変化と、新品種への挑戦

現場で強く感じるのが、気候変化だ。

「小学生の頃は10月の稲刈り時期にもうこたつが出ていた。今は残暑の厳しい中で稲刈りをするのが当たり前です」

この変化は作業環境だけでなく、稲の生育や品質にも影響する。秋山さんは品種の見直しにも積極的だ。

長年作ってきた「ヒノヒカリ」は高温障害が出るようになり、今年から「にじのきらめき」に切り替え中。岡山県推奨米の「きぬむすめ」「にこまる」を中心に、「ミルキークイーン」、そしてもち米と4〜5品種を栽培している。

12町もの田んぼを10月に一度に刈り取ることはできない。だから9月から11月上旬にかけて順番に。一番美味しい時期に刈れるように、時期を分散させる工夫だ。

省力化のためにドローンも導入。限られた時間と経費の中で、無理なく続ける工夫を重ねている。


親子三世代でつなぐ、これからの未来

よしひろ農園には、息子という20代の若い担い手がいる。

「農業の現場では40代・50代でも若いほうと言われます。うちは20代が最年少として日々の農作業に向き合っている」

息子は米作りの後に野菜栽培にも挑戦中。ブロッコリー、ほうれん草、レタス。米で培った水管理や土づくりの知識を生かしながら、少しずつ品目を広げている。

「米と野菜の両方で食料供給をしっかり行いたい」

そして、秋山さん本人は販売・PR・広告が好きなタイプ。栽培は息子、販売は自分という”良い役割分担”が生まれている。

「世代を超えて、相談しながら進められる環境があるのは、日々の農業を続けていく上で大きな力です」


“当たり前”の先にある、未来の食卓

鬼ノ城のふもと、水を張った田んぼに山並みが映る風景。黄金色に実る稲穂が風に揺れる秋の景色。長く農業が続いてきたからこそ残されてきた景観だ。

「私たちが農業を続けることそのものが、この風景を守ることにつながっている」

特別なことを重ねてきたわけじゃない。この土地で、水や土、地域の人たちに支えられながら、できることを一つずつ続けてきた営み。

肥沃な土地と豊かな水、そして人の手をかけた時間が重なり合って、作物は育つ。

「鬼ノ城のふもとで、地域で支え合いながら、この土地で育ったお米や野菜を、変わらず日々の食卓へ届けていきたい」

秋山さんの米は、200年の積み重ねの上に立っている。


■ 農家プロフィール

🏡 よしひろ農園(MsFineFarm)
👤 秋山款美 ── 6代目(200年以上続く家族農業。息子・秋山宏太朗さんが7代目)。昨年まで会社勤めをしながらの兼業農家、現在は専業として家業に専念。
📍 岡山県総社市東阿曽(鬼ノ城のふもと・足守川水系)
🌾 きぬむすめ・にこまる・ミルキークイーン・にじのきらめき・もち米
✨ 親子三人体制・11〜12ha/農協出荷ゼロ・完全直販/ネット販売年間約1,000万円/「2合入りオリジナル記念品パッケージ」で差別化/ドローン導入・省力化/息子が野菜栽培(ブロッコリー・ほうれん草・レタス)にも挑戦
🔗 https://msplantationmk2901.wordpress.com/

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