新潟県南魚沼市 株式会社まつえんどん ── 三輪弘和さん
新潟県南魚沼市。日本一のコシヒカリの産地として知られるこの土地に、23町歩の田んぼを受け継ぎ、拡大し続けている男がいる。
株式会社まつえんどん・三輪弘和さん。
元料理人。石川県金沢に16年滞在し、うち11年は飲食店に立ち続けた男が、今は6種類のお米を育て、ベーグルを焼き、米・食味分析鑑定コンクール金賞、お米日本一コンテスト最高金賞という称号を手にしている。
それでも彼は言う。
「賞を取っても、販売に繋がるわけじゃないんです」
11年の料理人経験が、農家を生んだ

三輪さんは南魚沼市出身。けれど、地元に戻って農家になろうと最初から思っていたわけではなかった。
金沢に16年いた。そのうち11年は飲食店で調理の仕事をしていた。
料理人として過ごした11年が、今の三輪さんの米作りの原点になっている。
「自分もずっと飲食店で調理してたので、お客さんに何を使ってるかを、自信を持って言えるものをやりたいっていうのがあって」
料理人の目から見れば、産地や生産者が分からない食材は信頼できない。だから自分が生産者になったとき、「これは間違いなくいいものを使っている」と言い切れる農業をしようと決めた。
資材も、肥料も、全部そう。
7町歩から23町歩へ、広がっていった理由

三輪さんの父親は、元々兼業農家だった。まだ金沢にいた頃から7町歩から8町歩を耕作しており、村の中でも大規模な部類に入っていた。
Uターンして父親を手伝うようになってから、田んぼはさらに増えていった。
「村の他の農家さんが、後継者に引き継がれてるのが分かって、『じゃあ任せようか』って後押しがあったんですよね」
自ら広げたというより、地域の農家から信頼されて預けられた。そんな広がり方だった。
2013年か2014年に農業部門を法人化。すでに農家レストランのような飲食事業も始めていたため、会社として事業を一つにまとめた。
そして今——現在は23町歩。10年ちょっとで、約4倍の規模になった。
生産する品種は、コシヒカリ・新之助・コガネモチ・虹のきらめき・ゆうだい21など6種類。
通年雇用の正社員はいない。季節雇用のスタッフ2名と、オペレーターとして働く2名、そして三輪さんと父親。スタッフの多くは冬場はスキーやスノーボードのインストラクターをしている人々だ。
「雪溶けて、また冬になったら山に行くって、ちょうどいいんですよね」
三輪さんは笑う。
賞は取った。でも、売上は上がらなかった

米・食味分析鑑定コンクール金賞。お米日本一コンテスト最高金賞。
数々の賞を手にした。知り合いにも受賞者は多い。ただ、誰もが同じ壁にぶつかる。
「賞を取って、じゃあ販売に繋がるかって言ったら、そうではないんです」
技術を証明し、味で評価されても、それが新規顧客の獲得や単価の上昇に直結しない。どうやってこの壁を越えていくか——三輪さんはずっと考えていた。
そんな時に、ひとつの出会いがあった。
ユーグレナとの偶然の出会い

きっかけは、一冊の本だった。
「たまたま本で、ユーグレナの健康食品のことを見たんですよ」
興味を持って、頭の片隅に置いていた。
その後、東京の展示会に出展したとき、ちょうど隣のブースが株式会社ユーグレナだった。偶然とは思えない巡り合わせだ。
話してみると、ユーグレナ側も農業部門を本格的に立ち上げようとしているタイミングだった。お互いの話が、するすると繋がっていった。
「ユーグレナさんって、健康食品のお客さんがもうアッパー層というか、富裕層みたいなところにいるらしいんですよね。40代女性の方が圧倒的に多い」
三輪さんが欲しかったのは、まさにそういう層への入口だった。
今、まつえんどんは米農家として、ユーグレナ社と提携する1号になっている。ユーグレナ由来の肥料を使って育てた米。まだデータ取りはこれから。でも、「自信を持って言える米」という三輪さんの哲学と、ユーグレナ社の姿勢はぴったり合っていた。
「コンクールで賞を取っても販売に繋がらないっていう課題があった中で、ユーグレナさんとの出会いは大きかったですね」
「1年は価格を変えない」——料理人出身の経営哲学

まつえんどんのお米は、農協には一切下ろしていない。すべて自社で販売している。
ふるさと納税が最も高いシェアを占め、飲食店・Yahoo!ショッピング・百貨店サイト・自社サイトと、販路は多岐にわたる。9月上旬から順次、品種ごとに販売時期をずらして出していく緻密な運用だ。
そんな三輪さんの経営哲学で、特に印象的な言葉があった。
「うちはあんまり、価格の変動をさせたくないんです」
昨年は資材高騰で値上げしたが、今年は下げた。ここからはこの水準で基本的にいくという。
この姿勢の背景にも、料理人時代の経験があった。
「飲食店で働いてた時、仕入れの値段が激しく上げ下げされるとすごいやりづらかったんですよ。たとえ自分がマイナスになっても、1年は価格を変えないようにしたい」
価格の安定性は、顧客や取引先への誠意だ。自分が料理人だった頃に欲しかったものを、自分が生産者になった今、提供している。
23町歩から50町歩へ、受け継いでいける体制を

農業には苦労も多い。水不足の年には他の農家との水の取り合いが起きる。資材価格は高騰しているのに、米の価格は下落傾向——「農家の手取りが下がる矛盾」を三輪さんは肌で感じている。
それでも、三輪さんの目線は前を向いている。
「今やってる村とか、この地域を受け継いでいける体制を作っていきたいんです」
23町歩を、4年後には30町歩、将来的には50町歩に。広さだけが目標ではない。そこに、通年雇用の正社員を抱えられる経営規模を作りたい。
加工品への展開もある。ベーグル、冷凍おにぎり。手軽に食べられる、質の良い加工品を、もっと増やしていきたい。
農業は、作って売って終わりじゃない。地域を継ぎ、人を雇い、食べ方を広げ、お客さんと向き合い続けるもの。料理人だった三輪さんには、その全部が「料理の延長線上」にあるのかもしれない。
「どの品種を食べても、美味しく感じてもらえるように、手を抜かずに作ってます」
「まつえんどんを信頼して、安心して買っていただきたい」
23町歩の田んぼの上で、三輪さんは今日も、一粒の米に向き合っている。
■ 農家プロフィール
🏡 株式会社まつえんどん(みわ農園)
👤 三輪弘和 ── 石川県金沢で16年を過ごし、うち11年は飲食業を経てUターン。2013〜2014年に農業部門を法人化。
📍 新潟県南魚沼市
🌾 コシヒカリ・新之助・コガネモチ・虹のきらめき・ゆうだい21 など6品種
✨ 農地23町歩(将来的に50町歩目標)/農協出荷なし・全て自社販売/株式会社ユーグレナと米農家として提携1号/米・食味分析鑑定コンクール金賞/お米日本一コンテスト最高金賞/玄米ベーグル・冷凍おにぎりの加工品も展開
🔗 https://miwanouen.net/
🔗 https://matsuendon.net/
▶ ほかの米農家さんの取材から見えてきた経営の本質は、米農家インタビュー21人の集約完全ガイドにまとめています。あわせてどうぞ。
よくある質問|まつえんどん・三輪弘和さんと南魚沼23町歩について
ご質問をクリック(タップ)すると答えが開きます。
Q. まつえんどんのお米は、どんな人に向いていますか?
あまり向いていない人(別の手が良い場合も)=とにかく最安重視/産地にこだわらない/物語に関心がない。料理人が作る南魚沼の米を味わいたい人向けです。
Q. まつえんどん・三輪弘和さんはどんな人物ですか?
Q. まつえんどんの23町歩はどれくらいの広さですか?
Q. なぜ料理人から米農家に転身したのですか?
Q. まつえんどんは株式会社ユーグレナと提携していますか?
Q. まつえんどんで栽培している品種は何ですか?
Q. 米日本一コンテストで金賞を受賞したのはいつですか?
Q. 「1年は価格を変えない」とはどういう経営方針ですか?
Q. 23町歩から50町歩への拡張計画はありますか?
Q. まつえんどんの米はどこで購入できますか?
Q. 南魚沼コシヒカリの特徴は何ですか?
Q. コメボウJOURNALとは何ですか?
Q. 料理人時代の経験は米作りにどう活きていますか?
Q. 後継者やスタッフの確保はどうしていますか?
Q. まつえんどんは海外展開も視野に入れていますか?
Q. まつえんどんの今後の目標は何ですか?
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Step 5:食べた感想を農家に伝える
参考・出典
- 株式会社まつえんどん公式情報(取材時点)
- 株式会社ユーグレナとの提携発表
- 米日本一コンテスト(一般社団法人主催)
- 農林水産省・新潟県農産物統計
- コメボウJOURNAL編集部による現地(オンライン)取材
※本記事の情報はコメボウJOURNAL取材時点のものです。最新情報は各公式サイト・公式SNSをご確認ください。
